暫定2車線の弊害 第6部 提言(5)「地域減災」視点で整備を

人と防災未来センター長 河田 恵昭氏
人と防災未来センター長 河田 恵昭氏

 ―高速道路が崩落した阪神大震災から21年が経過した。

 「阪神大震災を機に『壊れないように造る』から『壊れても命には関わらないように造る』という考え方(性能設計)に変わった。減災の理念に通じる。福島第1原発はどうなれば壊れるのかを研究してこなかった。一方、東日本大震災や熊本地震で高速道路が壊滅的なダメージを受けずに早期復旧できたのは一つの成果と言えるだろう」


 ―道路整備の大切さを痛感する災害が頻繁に起きている。

 「大規模災害時、社会インフラで一番重要なのは道路だ。2番目は水道。電気ではない。被災者の生活再建も道路の復旧抜きには成り立たない。ひとたび発生すれば物流を滞らせてはいけない。道路が整わなければ命を救えない」


 ―山陰両県の高速道路は暫定2車線(片側1車線)が約9割を占める。東日本大震災では4車線に比べて渋滞、輸送効率に影響した。

 「アメリカでは、ハリケーンが上陸する36時間前に避難命令を出し、町外へつながる全ての高速道を一方通行にしても渋滞が生じる。東日本大震災では私自身、渋滞に遭遇し、目的地にたどり着けない経験を何度もした。災害時は、身の危険を感じた人たちが同じ方向へ一気になだれ込む。暫定2車線で混乱するのは目に見えている」


 ―島根県は全国で唯一県庁所在地に原発があり、高速道路は避難ルートや緊急輸送道路にもなる。

 「減災の視点から見ると、和歌山県の未供用区間では南海トラフ巨大地震に備えて4車線を同じ所に通すより、山側と海側に2車線ずつ分けて整備した方がいいと提言した。必ずどこかが生き残るようリスク分散しておくことだ。熊本は火山地帯があり、土砂災害が多い地域がある。それぞれの地域特有の災害リスクを念頭に道路構造を考えていけば、道路が持つ災害時の貢献度は確実に上がる」


 ―これまでは、道路整備に災害の視点が十分ではなかったのではないか。

 「大規模災害はいつか絶対に起こる。発生を前提に被害をどこまで抑えられるかをリアルに考える必要があるのに、人ごとになってしまう。現実は甘くない。『これだけは守る』というのが減災。どんなに大きい災害が起きても、必要な機能が失われないように備えておくことだ」


 ―高速道路でのはみ出し死亡事故が後を絶たない。

 「中央分離帯を県が整備すればいい。何でも国に頼むから話が前に進まない。熊本県は、熊本空港隣接地に5億円以上をかけて防災用駐機場を整備していたために、熊本地震では多くの支援機が発着できた。まずは地元が動くことが大事だ。熱意が見えなければ国も動かない。自分たちの命は自分たちで守るという原点に立ち返り、本当に必要な道路の形は何かについて思いを巡らし、提案してほしい」


 かわた・よしあき 京都大大学院工学研究科博士課程修了。「減災」という言葉の名付け親。専門は防災学。日本自然災害学会長や日本災害情報学会長を歴任し、関西大社会安全研究センター長、中央防災会議防災対策実行会議委員などを務める。防災功労者内閣総理大臣表彰をはじめ、防災関係で多数の受賞がある。大阪市出身。70歳。

2016年6月10日 無断転載禁止