映画プロデューサーのささやかな日常(38)

「週末動員ランキング1位を獲得しました!」
 映画最後の仕上げ

   観客にいかに届けるか


 映画は通常、公開されるおよそ1カ月前から宣伝を展開します。その統括は宣伝プロデューサーの仕事です。

 宣伝プロデューサーとは、「宣伝」、つまり完成した映画へ観客のみなさんに劇場に足を運んでもらうための戦略を練り、実行する仕事です。「どんなキャッチコピーで心をつかむのか」「わずか15秒のテレビCMでどうやって見たい気にさせるのか」など、クリエーティブな仕事はもちろん、公開に至るまでのさまざまなイベントの企画、実現を行います。

 朝の情報番組などで見る「映画館で俳優が完成披露会見を行った」といったニュース、これらを仕込み、実現したりするのも宣伝部の大きな仕事です。

 僕の所属する松竹では、1作品につき映画宣伝プロデューサー1人と3、4人のパブリシストがチームを組んでいます。パブリシストは、映画の記事を扱う数多くの雑誌やテレビのバラエティー番組に取り扱ってもらうために、売り込みをする役目を担います。

 今回僕が制作プロデューサーとして参加した映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』では、主演の岩田剛典さんが愛知県出身、高畑充希さんが大阪府出身で、お二人の希望もあり、ご自身の地元はもちろん、それ以外にも大々的に地方キャンペーンを行うことになりました。

 普段は訪れることがない劇場に出演者が足を運ぶことによって、直接お客さんやファンと触れ合うことができる貴重な機会となり、映画自体の認知が向上する非常に効果的な手法です。まさに「足で稼ぐ」、選挙のような宣伝作戦です。

 5月9日の福岡からスタートし、ひと月かけて、名古屋、岡山、大阪、札幌、仙台など通常よりも多く地方キャンペーンが行われました。イベントを開催した劇場では、いま最もブレークしている2人だけに、集まったファンからは悲鳴のような歓声!!

 公開直前週となる5月24日には、さらなる盛り上げのために、65組130人のカップル向けの試写を開催しました。上映後には、来場された方の悩みを聞き、キャスト陣が答える恋愛相談トークイベントも。そこで「9年交際している彼がプロポーズしてくれない」という悩みには、岩田さんと高畑さんが彼の背中を押し、晴れてプロポーズを成功させるという奇跡の展開も起きたのです! 

 「(映画の中の登場人物)樹とさやかのように幸せになりたい」と涙ながらに話す彼女に、映画の持つ力のすごさに驚かされました。高畑さんの目にはうっすらと涙が浮かんでいました。

 今回、僕も地方キャンペーンに同行することで、映画館は観客が出演者と同じ空気の中で一体感を持つことができ、感動を共有できる空間なのだ、ということを改めてかみしめました。また、数多くのお客さまから「見たい」と期待され、実際にご覧いただき満足いただける映画を届けられたときほど幸せなことはありません。

 ぜひ、『植物図鑑』を映画館でご覧いただければ幸いです。かなりの自信作です!

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2016年6月10日 無断転載禁止