暫定2車線の弊害 第6部 提言(6)費用対効果重視から転換

国土交通省・道路局長 森 昌文氏
国土交通省・道路局長 森 昌文氏

 -山陰両県の高速道路は暫定2車線区間(片側1車線)が約9割を占め、はみ出し事故が後を絶たない。

 「非常に大きな問題と認識している。あくまで暫定は暫定で、当たり前の構造とは思っていない。暫定とは常識的に言えば10年、長くても15年。速度低下に伴う事故リスクの低減を目的に、部分的に車線を増やす付加車線など、あらゆる方策を使い、悲惨な事故防止に力を注ぎたい」

 -ドライバーの安全確保を理念とする「道路構造令」に基づいて整備された暫定2車線道路で、過失のない人が亡くなっている。構造令の本旨を鑑みると矛盾を感じる。

 「指摘の通り、としか言いようがない。中央分離帯付きの高速道路を造り上げるのが国土交通省としての基本だ」

 -4車線への移行が交通量が少なく困難な中、現行のまま中央分離帯を整備する「完成2車線」とする選択肢はあるのか。

 「山陰両県の主な区間で完成2車線に移行する場合、全体で13・5メートルの幅員を確保しないといけない。現行より3メートルの拡幅が必要な一方、4車線化した際には分離帯の撤去や修復など大きな手戻り工事が発生する。特に両県に多い橋やトンネルでは費用や時間がかかり、不可能に近い」

 -完成2車線が難しい中でどのように安全性を向上させるのか。

 「付加車線の整備と並行し、簡易的な分離帯でどこまで安全性を追求できるのかを試行したい。現行の幅員10・5メートルの中に構造物を設けることをどこまで許容するかは、警察との調整の中で議論すれば解決の道は開けると思う。選択肢を何案か示したい。地元からも提案してほしい」

 -山陰両県では、スウェーデンで設置が進む鉄製ワイヤロープ防護柵について実験的に設置を求める声が上がっている。

 「非常に野心的な提案だ。対面車線での乗用車による衝突回避など、かなりの部分で効果を発揮すると見込んでいる」

 -抜本的な安全対策である4車線化に向けての判断基準は、交通量や費用便益比(B/C(ビーバイシー))など、人口が減少する山陰両県にとっては厳しい条件が並ぶ。命を守る視点を盛り込んだ新しい評価軸が必要だ。

 「その通りだ。高速道路整備は効率性で測ることが根付いている。世界中で日本だけだ。全国の道路整備の順番付けをするために交通量を持ち出し『B/C至上主義』が定着したのが、暫定2車線の問題を招いた根底にある。必要性を訴えるのに、B/Cを使ってきた私たちにも責任の一端があり、反省している。どんな形が良いか、私自身の答えは出ていないが、大きく舵(かじ)を切り、脱却すべきだと公言する」


 もり・まさふみ 東京大工学部卒。1981年、建設省(現国土交通省)に入省。国交省道路経済調査室長、有料道路課長、高速道路課長、大臣官房技術審議官、近畿地方整備局長などを経て、2015年7月から現職。奈良市出身。57歳。

2016年6月11日 無断転載禁止