紙上講演 共同通信社編集局次長 新堀 浩朗氏

共同通信社編集局次長 新堀 浩朗氏
皇室取材の現場から

 日本人の生き方現す象徴

 山陰中央新報社の石見政経懇話会の定例会が17日、浜田市であり、共同通信社編集局次長の新堀浩朗氏(54)が「皇室取材の現場から」と題して講演した。天皇陛下の平和を希求する思いなどを紹介し、日本人の生き方を体現する象徴的な役割を果たされているとした。要旨は次の通り。

 陛下は今年1月、国交正常化60周年を記念し、フィリピンを訪問された。先の大戦の戦地で敵味方なく戦没者を慰霊し、多くの人が亡くなったことを日本人は決して忘れてはいけない、と宮中晩餐(ばんさん)の場でスピーチした。天皇の立場での初訪問には大きな意義があったと思うが、側近に「陛下は満足をされたか」と尋ねると「満足ではなく、安堵(あんど)ではなかったか」との答えが返ってきた。

 陛下は戦争と平和について度々言及されてきたが、発言をまとめると、戦争の歴史を学び、語り継ぎ、今後の日本の在り方を考える必要性を説いている。1948年の15歳の誕生日には、A級戦犯が処刑された。そういう少年時代を送ってきた。地方巡幸で広島の戦争犠牲者の家族と話をするなど若いころからの活動で、平和の大切さが骨の髄までしみこんでいる。

 人柄は生真面目で、毎朝6時起床を継続しており、接した人は、自己規律する力の強さを感じると話す。若いころ、陛下が車を運転し、那須の御用邸から公道に出ようとされたことがあったが、免許証を忘れたことに気づいて取りやめたという。誰も陛下に職務質問はしないと思うが、性格を物語る逸話だと思う。

 91年の雲仙普賢岳の災害時の慰問から、ひざをついて被災者に声を掛けられるようになった。国民を総体としてとらえるのではなく、一人一人と向き合うことを大切にしている考えが表れている。

 陛下の活動を振り返ると、「自らを律し、互いに助け合い、困難に立ち向かい、人間の尊厳を重んじ、平和を願う」という姿勢が見て取れる。これは、日本人が大切にしてきたことで、陛下は国民の象徴として、こうした考え方や行動を体現している。

2016年6月18日 無断転載禁止