アキのKEIルポ リターン才能の産物

立ち位置変え狙い澄ます

 日本テニス界の第一人者だった松岡修造氏が初めて錦織圭の試合を見た時、「リターンゲームにしか興味がないように見えた」という。錦織が小学6年生の時のこと。決してサーブが得意ではないその少年は、喜々としてリターンに挑んでいるように、松岡氏の目に映ったのだ。

 それから10年以上の年月が流れた今も、錦織の武器がリターンであることに変わりはない。昨年3月、リターンで相手を圧倒した試合後に「なぜそんなに得意なのか?」と問われた彼は、少し考えた後に「ここは一つ、リップサービスでもしてやろうかな」とでもいうようないたずらっぽい笑みを浮かべて「才能じゃないですか?」と言った。

 「才能」とは、複数の要因を統括し、最も効果的な結論を導き出す能力だろう。ならばウィンブルドン初戦のサム・グロート戦のように、構えるポジションを変えることで相手のサーブを誘導し、的確な技術で打ち返した彼のリターンは、まさに才能の産物だ。

 今日の試合のエンターテインメント性をどう評価する?

 そう問われた錦織は「お客さんもチケット分は取れたのでは?」と、いつものあのいたずらっぽい笑顔を見せた。“脳力”も存分に発揮した錦織のリターンは、見る者を十分に楽しませた。

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 「錦織圭 リターンゲーム」(学研プラス)の著者で、四大大会取材を続けるフリーライターの内田暁(あかつき)さん(41)が、ウィンブルドンから報告する。

2016年6月29日 無断転載禁止

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