ウィンブルドン特派員便り 気持ちで戦った1週間

さらに上へ大きな経験

 「筋肉が切れるくらいまではやろうと思っていた」。見ていても体の状態が悪いのは明らかだったが、そこまでとは。4回戦で途中棄権となった錦織圭選手の試合後の会見で、胸の内を聞いてドキッとした。

 「グランドスラムじゃなかったら出ていなかった」という左脇腹の状態で臨んだ今大会。トップ選手の責任感も意地もあっただろう。

 思い出したのは2014年の全米オープン準優勝の後、国内初戦となったジャパン・オープンだ。連戦の疲れ、右臀部(でんぶ)の痛みもある中、地元ファンの声援にも応えて優勝し、決勝の後に見せた涙だ。あの時も「限界」が目の前にあった。

 今大会3回戦はいつにも増してガッツポーズが出た。闘っていた相手は、自分だった。

 劣勢の4回戦。コーチ陣がスタンドから身を乗り出し、プレーを辞めるようサインを送ったが、なかなか首を縦に振らなかった。厳しさで知られるマイケル・チャン・コーチをもいつか超えていく時が来る。16強の自己最高と並び、さらに上へ。気持ちで戦った1週間が、後に大きな意味を持つと信じている。

  =おわり=

2016年7月6日 無断転載禁止