(5)浜田市美又地区(下) にぎわい創出

内覧会で、黒米と黒大豆のご飯などの御膳料理を紹介する山根旅館の山根淳平さん(左)。「食」を切り口とした温泉街のにぎわい再生を目指す
 食通し温泉街 魅力発信

 浜田市金城町美又地区の美又温泉街で、装いを一新した旅館が24日、館内に和食店を開いた。「ここにしかない一膳」の売り文句にひかれ、早速訪れた。昼食に頼んだ御膳料理は、黒米と黒大豆を炊いたご飯や黒大豆製豆腐の揚げ出し、おからのサラダなど特色のある献立ばかり。赤みがかったご飯のもちもちとした食感は癖になりそうだ。

 店内に居合わせた大池三郎さん(65)=浜田市金城町追原=はNPO法人「美又ゆめエイト」の役員を務め、自身も黒米を栽培。ご飯を口に運びながら「自分が作った米を食べてもらえる場が増えるのは、やりがいにつながる」と顔をほころばせた。

 店名は「和食やまね」。開店した山根旅館の代表者で、料理長も務める山根克也さん(60)は「独自色のある料理で、温泉街を再びにぎやかにしたい」と熱い思いを聞かせてくれた。同NPOから食材を仕入れるなど連携を強め「地域まるごと6次産業化」の一翼を新たに担う。

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 住民組織「美又湯気の里づくり委員会」が活動を通した美又温泉活性化を目指すのは、入り込み客数の減少傾向に歯止めが掛からず、地域の活力低下の一因になっているからだ。市観光交流課によると、2014年の入り込み客数は約6万5千人で、ピークだった1994年の約17万7千人の4割を下回っている。

 克也さんとともに調理を受け持つ次男の淳平さん(29)も開店に先立つ内覧会で「子どものころのような温泉街のにぎわいを取り戻したい」と決意した。

 「美又の食の魅力を発信する拠点として定着してほしい」との思いを強くして、オープンしたばかりの店を後にした。

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 温泉街にある入浴施設「美又温泉国民保養センター」の一角に産直市「みまたの市場」が開設されて1年が過ぎた。同NPOが運営を担い、開発した商品や地物野菜などを販売する。接客を受け持つ小西康子さん(55)=同=は「温泉の常連客とも顔なじみになり、商品目当てに来てくれる人もいる」と笑顔。美又の特産品のファンづくりや外貨獲得に大きな役割を果たしている小さな産直市の発展に情熱を傾ける。

 同NPOは16年度、温泉の泉源を生かした「温泉モヤシ」の栽培実験にも乗り出す予定で、単価の高い新たな特産品として期待を寄せる。6次産業化を切り口に、温泉街のにぎわい再生も目指す挑戦から目が離せそうにない。

2016年3月26日 無断転載禁止