(9)浜田市都川地区(上) 棚田の活用

 景観生かして縁側喫茶

 五月晴れが広がった大型連休中の1日、農林水産省が「日本の棚田百選」に認定している「都川の棚田」で知られる浜田市旭町都川地区で、見物客らをもてなす「縁側喫茶」が、今年も始まった。住民有志の2軒が自宅を開放し、茶菓を楽しみながら縁側で交流する趣向に興味を持ち、山里の小さな集落に車を走らせた。

 出迎えてくれたのは、白川英隆さん(71)と妻の則子さん(67)の満面の笑顔。先着の夫婦客は既に縁側から足を投げ出し、則子さんお手製の米粉ケーキを味わいながら、のんびり気分を満喫している。「石垣棚田の景色が気に入り、2年前から毎年来ているよ」。のどかな雰囲気に包まれ、初対面同士の会話にも自然と花が咲く。

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 縁側喫茶は2012年、棚田を生かしたにぎわい創出を目指し、白川さんら4軒で始めた。季節ごとに移ろう景観美を楽しんでもらおうと、5~11月の毎月第1、第3日曜日に開設。これまで毎年約1200~1600人の来客があり、高齢が原因で2軒に減った昨年も約900人が訪れた。

 江戸時代に浜田藩の参勤交代に使われた旧広島街道が通り、多くの通行人でにぎわった都川地区。人口は現在、300人を下回り、高齢化率は62・19%にも上る。小学校や病院がなくなり、商店が激減するなど、過疎高齢化の波は高い。

棚田の景観を生かしたにぎわい創出を目指して開く「縁側喫茶」で、訪れた人と談笑する白川英隆さん(左)と則子さん(左から2人目)
 一方で、たたら製鉄の「鉄穴(かんな)流し」に由来し、江戸時代に築かれたとされる石垣棚田群は壮観で、地区に残された大切な宝。地元の都川公民館の館長を務める英隆さんが縁側に並び「地域が誇る棚田を見に来てもらい、魅力を感じてほしい」と話す言葉に、深い愛着がこもっていた。

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 縁側喫茶を開くもう1軒の村武正行さん(72)と妻の千代子さん(72)が住む築180年を超える古民家に16日、広島県からのバスツアーで総勢48人が訪れた。ふすまを取り外した3間に配した長机の前で、千代子さんが心を込めてこしらえたぜんざいや山菜料理を堪能した。

 ツアーは、浜田市が広島市に置く「広島PRセンター」が、縁側喫茶の取り組みを受けて12年から続けている。昨年は計309人が参加するなど好評で、高木圭子所長(68)は「都市部では味わえない雰囲気や温かみのあるふれ合いが気に入られている」と手応えを感じ、正行さんも「家族のような付き合いがしたい」と意を強くする。

 棚田に着目して始まった取り組みは定着し、新たな企画にもつながっていく。

2016年5月31日 無断転載禁止