(10)浜田市都川地区(中) 新たな企画

「都川の棚田」をコースにしたウオーキングイベントで、「日本の棚田百選」に認定された景観美を楽しむ参加者たち
 自慢の棚田 広く発信へ

 眼下に広がる階段状の棚田は壮観で、間近に見る石垣の迫力は、まるで城壁のよう。これまで、遠目に見上げるばかりだった棚田の多彩な表情に触れ、山あいの急傾斜地で守り継がれてきた風格のある景観に感じ入った。

 「日本の棚田百選」に認定された浜田市旭町都川地区の「都川の棚田」の中でも代表的な棚田3カ所をコースに組み込み、29日に開かれた初めてのウオーキングイベント。参加者62人に交じって、5キロのコースで歩を進めた。

 総面積1・1ヘクタールに上る「田代の棚田」を皮切りに、11枚の田が織りなす段差が目を引く「大屋形の棚田」、4メートルにも及ぶ石積みに圧倒される「熊ケ谷の棚田」のあぜ道を歩く道筋は高低差もあり、決して楽ではなかったが、田植えを終えたばかりの苗の緑が目にまぶしく、心身ともに癒やされた。

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 イベントは、新たな趣向で地域の魅力を伝えようと都川公民館が企画した。親しみを深めてもらうため、あぜ道を歩くコース設定を発案。所有する3人に持ち掛け、快諾を得た。同公民館の職員2人と合わせた5人が一丸となり、事前に案内看板を設置したり、林道のやぶを伐採したりして準備を整えた。

 所有者のうち最高齢の藤沢守さん(81)は「多くの人に棚田を見てもらうのは、維持管理する励みになる」と運営に積極的に加わった。イベント当日、参加者とともに歩ききり、ゴール後、浮かべた笑顔に満足感を漂わせた。

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 工夫を凝らした企画は多くの参加者を呼び込み、同公民館によると、地元住民は6分の1程度で、大半は地区外からだった。肩を並べて歩いた川本町川下の主婦、前田節子さん(64)は「初めて見る都川の棚田は、整然とした石積みがきれいだった」と景観美を存分に楽しみ、黄金色の稲穂が一面にこうべを垂れる秋の再訪を思い描いた。

 出発前のあいさつで「都川の最大の売り物は棚田。ぜひ堪能してほしい」と参加者に呼び掛けた公民館長の白川英隆さん(71)は、イベントの盛況ぶりに「大成功だった」と喜びを隠さず、「地区の恒例行事として続けていきたい」と意欲を示す。

 「新たなイベントが目玉企画に育ち、都川の魅力をさらに広めてほしい」。心地よい汗をぬぐいながら、壮大な石垣棚田群を後にした。

2016年6月1日 無断転載禁止