(12)大田市北三瓶地区(上) 一体感の醸成

 有志意識改革一歩ずつ

 「北三瓶はひとつです」を合言葉に活動しているのが、名峰・三瓶山の北側に位置する大田市三瓶町多根、野城、同市山口町の38住民団体でつくる「北三瓶よろず会」。歴史的に出雲国と石見国に分かれていた3地域をひとくくりにした北三瓶地区の一体感を高めたいとの思いが、キャッチフレーズに込められた。

 出雲地方に属していた「簸川郡山口村」が大田市に編入合併したのは1954年。今から60年以上も前にさかのぼる。58年には同市三瓶町多根に北三瓶小学校が設立されるなど、地域の統合は進められたが、住民間の意識には依然として溝が残り、近年まで、相互交流がさほど進んでいなかったという。

 出雲市佐田町に隣接する大田市山口町佐津目で田舎体験施設「子ご美の里」を運営している矢田千里さん(78)は「同じ地区にはなったが、いさかいがあると出雲弁と石見弁でけんかしていた」と振り返る。方言の違いに触れた逸話が、住民間の垣根の高さを物語る。

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 過疎化の進展による地域の活力衰退に危機感を抱き、住民主体で2012年5月に設立した北三瓶よろず会。三瓶山を望むかつての国境に住み、「境木」の屋号を持つ大谷正幸会長(66)=大田市三瓶町多根=は「住民の一体感を高めることが、山積する地域課題に対応するための基礎になる」と考えた。

北三瓶地区を一体的に紹介する案内看板の前で、北三瓶よろず会の活動に意欲を示す大谷正幸会長
 工夫したのが、三瓶町多根と山口町で毎年交互に開いていた地区文化祭の会場の固定化。それまでは、会場不在の地域からの来場者は少なかったが、4年前から会場を北三瓶小・中学校に一本化することで両住民が集う機会となり、交流の輪が広がった。

 趣味のパッチワーク作品を出展している主婦、水滝三智子さん(63)=同町野城=は「山口町の人にも見に来てもらえるようになり、付き合いが増えた」と実感する。

 また、北三瓶地区全域の名所を一体的に紹介する案内看板を2基製作し、設置したほか、3地域の行事予定を併記した「ふるさとカレンダー」を有料で全戸配布。地区全体をカバーする自主防災組織の結成を主導するなど、住民の意識醸成に努めている。

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 「山口だ、多根だと言わず、もう北三瓶町として一緒になったらどうか」。地元で生まれ育った矢田さんが提言する。大谷会長は「活動を始めてわずか4年。意識の浸透にはまだ、時間がかかる」と話すが、一丸となった地域づくりに向け、手応えを感じている。

2016年7月5日 無断転載禁止