映画プロデューサーのささやかな日常(39)

来年公開される『一週間フレンズ。』の音楽録音風景
 主題歌の意味

   映画体験の記憶呼び起こす


 映画では大抵、エンドロールで主題歌が印象的に流れだします。主題歌は、映画自体のエンディングを飾り、見ている人の感情を盛り上げ、最良の余韻を与える最も重要な要素の一つです。平成の世になってからは、あらゆる世代に通じる名曲が生まれにくくなっているのも事実ですが、その中でも「映画主題歌」には、時代時代にヒットした映画の記憶と相まって、大きな意義があると思っています。

 かつて、映画『世界の中心で、愛をさけぶ』では平井堅さんの「瞳をとじて」が大人気となり、映画はもちろん主題歌も大ヒットとなりました。それ以降、GReeeeN「遥(はる)か」や秦基博さんの「ひまわりの約束」など、映画からさまざまなヒット曲が生まれました。ちなみに「ハナミズキ」や「涙そうそう」などは曲ありきで、映画化されて大ヒットしました。

 ビッグアーティストである松任谷由実さん、山下達郎さん、桑田佳祐さん、小田和正さん、宇多田ヒカルさんらは、ご自身で映画自体の企画や脚本に目を通され、内容に沿った書き下ろしをされることでも知られています。

 彼らに書き下ろしていただければ、映画自体の「格」と「イメージ」もアップし、世間から注目もされるため、主題歌としてのクオリティーのみならず宣伝面でも効果的となります。しかし、彼らは納得する企画以外の作品を受けることはめったにありません。実は僕もいままで彼らにオファーしようと考えたことがありましたが、公開時期の近い別作品の主題歌として決まっていたため、諦めざるを得ないことがありました。

 今回僕が携わった映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』では、もともとJUJUさんが歌われている名曲「やさしさで溢(あふ)れるように」をFlowerさんにカバーしていただきました。この映画は、ごく普通の女の子が、運命的な恋に出会い、成長していく正統派純愛ストーリーです。恋を知り、傷つき、もがきながら、少しずつ変わっていく主人公2人の恋の行方。歌詞に“花の名前も(中略)あなたが教えてくれたことで”とあり、映画の内容にぴったりとハマったのです!

 たくさんの方々に愛されてきた名曲を、若々しい20代のグループFlowerにあらためて歌っていただくことで、新鮮で、より切なく力強い曲が完成しました。この曲は、デジタル先行配信スタート直後からiTunes総合アルバムチャートで1位を記録。LINE MUSICでも1週間以上にわたり1位にランクインしたほか、CDもオリコンデイリーチャート2位を記録するなど好調なセールスになりました。

 人々を感動させる映画には、いい脚本、キャストとスタッフ、そしていい主題歌がいつもあります。主題歌は、日常に戻った私たちが映画体験の記憶を呼び起こすことができる、すてきな「鍵」なのではないかと思います。

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2016年7月8日 無断転載禁止