仕事みてある記 気持ちのいい音作るピアノのお医者さん

「お客さんが弾き心地良く、気持ちのいい音を響かせるピアノに仕上げるよう心掛けています」と話す太田有美さん=出雲市渡橋町、アツタ楽器
 ピアノ調律師(ちょうりつし)

   太田 有美(おおた ゆみ)さん (出雲市渡橋町)



 「ピアノのお医者さんです」。出雲(いずも)市渡橋(わたりはし)町、アツタ楽器のピアノ調律師(ちょうりつし)、太田有美(おおたゆみ)さん(29)は、繊細(せんさい)で複雑(ふくざつ)な機能(きのう)を持ち、演奏(えんそう)者自身が音を調整するのが難(むずか)しいピアノの音の狂(くる)いを直し、メンテナンスを行い、修理(しゅうり)も手がける仕事に情熱(じょうねつ)を傾(かたむ)けています。


 グランドピアノの音程(おんてい)を合わせる調律を進めています。最初に鍵盤(けんばん)の中央あたり、左端(はし)から49番目「ラ」の音を決めます。鍵盤を指でたたいて音を聞き、チューニングハンマーを使って弦(げん)を引(ひ)っ張(ぱ)ったり緩(ゆる)めたりしながら調整。お客さんの希望を聞き、チューナーで442ヘルツや440ヘルツなどに合わせます。

 基準(きじゅん)になる音が決まると、左端から37番目の「ラ」音に戻(もど)り、そのすぐ低音側の「ファ」から高音側の次の「ファ」までの1オクターブの音を作ります。今度は耳だけで音を聞き分けます。この1オクターブが、他の6オクターブの基準になり、そのピアノの表情(ひょうじょう)を決める大事な作業なのです。

 「きちんとした自分の基準を持ち、伸(の)びのある、自然で気持ちのいい音に聞こえるように音程を合わせていきます」「音感は経験(けいけん)を積む中で磨(みが)きました。子どものころピアノを習っていたのが役立っていると思います」

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 雲南(うんなん)市生まれ。ピアノを習っていたころは弾(ひ)くのが好きでしたが、だんだん音が出る仕組みの方に関心が向かいました。高校卒業後、調律とともに、メンテナンスや修理の教育に力を入れていた京都(きょうと)市の専門(せんもん)学校に進み、3年間勉強。岡山(おかやま)市の専門店でも、ヨーロッパ製(せい)ピアノのメンテナンスや修理を、本格的(ほんかくてき)に学びました。

 ほとんどのピアノの鍵盤は88あります。弦は一つの音に1~3本、計250本ほど。弦の多さや7オクターブの広い音域(おんいき)、弦同士の共鳴(きょうめい)などが相まって、ボリュームある音が出せ、音に深みが生まれ、豊(ゆた)かな音色(ねいろ)を奏(かな)でます。

 木材はじめ天然素材(そざい)なので、温度や湿度(しつど)の影響(えいきょう)を受けて微妙(びみょう)な狂いが生じやすい楽器。部品を、正しい運動をするように設定(せってい)し直す「整調(せいちょう)」、音色(おんしょく)を整える「整音(せいおん)」も重要。調律を含(ふく)めすべて点検(てんけん)すると約50項目(こうもく)、1台「2~3日かける場合もある」と言います。

 「お客さんが弾き心地(ごこち)の良いピアノに仕上がるように心がけています。喜んでもらえるのが一番うれしい。好きで選び打(う)ち込(こ)んでいる仕事。天職(てんしょく)です」


★メッセージ

 将来(しょうらい)を考えると、いろいろ悩(なや)みが増(ふ)えますが、自分がワクワクすることをやっていくと頑張(がんば)れるものです。そうした経験を積み重ね、楽しいと思う道を選ぶことが大切だと思います。自分の気持ちに正直に、信じた道を進むのがいいと思います。勇気がいることだけど。

2016年7月13日 無断転載禁止

こども新聞