女子ログ 通貨と人間

 イタリアで暮らしていた時期がある。かの地での生活に慣れた頃、EUの共通通貨「ユーロ」が誕生した。当時、例えば文房具売り場ではペンと言えば赤色と青色くらいしかなかった。日本で当たり前にあった多色ペンはなく、あっても日本円で1本500円以上はした。物をはじめ、さまざまな面で選択肢が少なかったように記憶している。

 ユーロの流通開始で、既に道端や食卓でも繰り広げられていた「グローバル化」の議論は白熱した。グローバル化が進めば国が潤う、いや独自の文化や歴史が奪われる…などなど。通貨が共通になって1年、2年と過ぎるにつれ、カラーのペンは品数が豊富になり、グローバル化をめぐる議論は少なくなった。そして、なぜなのだろう、人々の挨拶(あいさつ)から抱擁(ほうよう)とキスが省かれていった。

 3年、4年もたつと外国人が随分と増え、物はもちろんのこと、システム、考え方や感じ方も流入し、取り込まれ、広がっていった。一方でイタリア、イタリア人の独自の美しさの数々は、経済圏拡大の犠牲となった。生活様式はもちろん、人の内まですっかり変えた通貨の統合に、「経済」と「人間」の関係の深さを感じた。

 通貨統合に不参加だった英国はEU離脱を選んだ。通貨が変わらなかった英国の国民ならではの選択か…と改めてお金と人の関係を感じた。

(松江市・effe)

2016年7月15日 無断転載禁止