紙上講演 学習院大教授 青井 未帆氏

学習院大教授 青井 未帆氏
憲法は誰が守る?

 「権力抑制」唱え続ける

 山陰中央新報社の石見政経懇話会、石西政経懇話会の定例会が23、24の両日、浜田市と益田市であり、学習院大教授の青井未帆氏(43)=憲法学=が「憲法は誰が守る?」と題して講演し、国民が「権力は抑制されるべきだ」と唱え続けていくことが、憲法を守ることにつながると強調した。要旨は次の通り。

 憲法は、究極的には、私たちの自由を守るためにある。だが、表現の自由は狭まっていると感じる。政治的中立性という錦の御旗の下で最近、「憲法を守ろう」という言説は政治的であると言われることが多くなった。国家に憲法の遵守を求めるのは当たり前なのに、政治的中立性を守っていないように言われるのは、立憲主義の危機だ。

 憲法の存在理由は、権力を抑制すること。しかし、明治憲法は、軍部の暴走を止めることができず、悲惨な結果を招いた。過去の失敗が出発点となり、戦後の日本国憲法は「滅私奉公」「お国のため」といった全体主義的な思想を否定し、個人の自由を守るために憲法があるという価値観の転換がなされた。

 しかし今、権力の抑制という課題への関心は低い。安全保障法制の議論の際には、集団的自衛権行使や他国軍への後方支援など自衛隊に与えられた新たな権限を、政治や国会がどうやって統制するのかという論議が、あまりにも少なかったのではないか。自民党の改憲草案にも、こうした観点からの提案がない。

 政治は、私たちが託している政治家によって行われているが、憲法12条には「憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」と記されている。権力の抑制が必要と考えるのなら、国民が不断の努力で主張し続けなければならない。それが、憲法を守るという意味だと考えている。

2016年8月25日 無断転載禁止