(18)江津市黒松地区(上) 産業振興

 地域の恵みを特産品に

 「シャキシャキとした食感が特長で、都会の料亭でも、食材として使われています」

 江津市黒松地区の黒松海岸近くのほ場で8月中旬、浜辺に自生するセリ科の植物・ハマボウフウの試験栽培に取り組んでいる黒松自治区推進協議会産業部の重田芳樹部長(68)たちが、生育状況を熱心に確かめていた。

 白砂が広がる風光明媚(めいび)な黒松海岸にも自生するハマボウフウは、地元では身近な食材。天ぷらや酢みそあえで食べている。需要の広まりに着目した産業部が、海岸から続く砂地のほ場約75平方メートルに2015年4月、約300株を植えた。定植から収穫まで3~4年程度かかる見込みという。

 試験栽培の傍ら、今後、販路開拓なども検討していく方針。「地域の特産品として売り出したい」。茎が約10センチに育ったハマボウフウを見つめる重田部長の視線に、大きな期待がこもっていた。

   ◇  ◇  ◇

特産化を目指して試験栽培しているハマボウフウの生育状況を確認する産業部の重田芳樹部長(右)たち
 黒松地区は江津市東端の海沿いにある小さな漁村。かつては、漁師が取った魚を女性が缶に詰めて行商に出かける光景が盛んに見られたが、漁獲減少や過疎化で漁師が減り、基幹産業の漁業は、次第に往時の活気を失っていったという。

 人口は現在396人で、平成の合併時の04年10月の508人から22%も減り、高齢化率は48・2%に上る。小学校の閉校や商店の廃業などで、地域のにぎわいも薄れてきた。

 こうした状況に危機感を持ち、住民主体の活動を展開しているのが同協議会だ。市内で2番目に早い09年に発足し、産業部のほか、空き家対策などに取り組む生活基盤整備部や防災部など6部体制で、課題解決に向き合っている。

   ◇  ◇  ◇

 産業部が力を入れているのが、地域性を生かした特産品の開発。天日干ししたイカやワカメのほか、岩ノリなど海産物の加工を手掛け、近くの道の駅などに出荷する商品は、完売が続くなど人気が高い。

 大量生産ができず、大きな収益を生み出しているわけではないが、スモールビジネスとして根付き、生産も年々増加。住民の生きがいにもつながっている。多少の収入は同協議会の会計に繰り入れるなどして活動の支えにしている。

 新たな試みの検討も始めた。重田部長は8月24、25の両日、岩ノリの陸上養殖を視察するために、同協議会の永井英治会長(67)ら3人と高知県室戸市を訪れた。岩ノリ事業の拡大に向け、水槽を使って安定生産している事例を参考にしようとの狙いだ。

 「産業部の活動の目的は外貨獲得」と話す重田部長。地域の恵みを生かした産業振興の取り組みは、次のステップに進もうとしている。

2016年9月1日 無断転載禁止