秋山英宏の全米リポート 圧倒的な勝利必要

第3セット失速は「減点」

 楽勝ペースから一転、相手の自滅にも助けられ、なんとか逃げ切った。錦織は「内容はよかった」と強調したが、満点をつけられる試合ではないだろう。第3セットの失速に関しては「彼のテニスがガラッと変わった。攻撃的だった」と相手をたたえたが、開き直りは想定しておくべきで、はね返せずにセットを失ったのはまずかった。

 見方が厳しくなるのは、ライバルに好調ぶりをアピールする好機だったからだ。リオ五輪銅メダルを引っ提げて大会に乗り込んだ。体調は万全、練習でも好調だっただけに、ここは、あっさり勝っておきたかった。

 もともと「誇示」ということのできない選手ではある。ジュニア時代の錦織を、アカデミーのコーチが「いいプレーをしたら、拳を握って『カモン!』と叫ぶんだ。日本語なら『よし!』だろ?」と諭す場面を目にしたことがある。頼りなく見えるほど自然体で、押し出しの強さはないが実はとんでもなく強い、それがニシコリ少年だった。

 だが、今の彼は四大大会優勝を狙おうという選手なのだ。ガッツポーズで威圧する必要はないが、スコアでも存在感でも相手を圧倒し、第三者にも「彼とは当たりたくない」と思わせる存在にならなくてはいけない。無難に初戦を突破したが、そこは減点対象だろう。

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 テニスライターの秋山英宏さん(55)がニューヨークから初の四大大会制覇を目指す錦織圭の戦いをリポートする。

2016年9月1日 無断転載禁止