(19)江津市黒松地区(中) 伝統を生かす

初めて企画した写真コンテストで、希少な船神事の魅力を伝える作品を見る高島淑美さん(左)と関係者
 希少な船神事に新企画

 夕日で赤く染まった海上を進む船団に、薄暗闇に浮かぶ船上の明かり、夜の浜辺に繰り出す勇壮なみこしの練り歩き―。

 江津市黒松地区で江戸・文政期から180年以上続くとされる「大島神社例大祭」を題材にした初めての写真コンテストには、「山陰の田子ノ浦」とも呼ばれてきた景観を舞台にした希少な船神事の情景を切り取った作品80点が寄せられた。

 神事が繰り広げられた黒松海岸を望む同神社仮殿で、8月中旬に開かれた審査会。「祭りの特色を十分にとらえ、黒松に訪れてみたいと思わせる力があるか」を評価基準に、自治会長や各団体の代表ら審査員16人が、作品を熱心に見比べた。

 同神社の総代長として、神事と写真コンテストを主催した祭典準備委員会の賀美彰会長(67)は「地元が大事にしている祭りの魅力を伝えてくれる素晴らしい作品が集まった」と喜び、入賞作を手に「今後もぜひ、続けていきたい」と力を込めた。

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 コンテストを発案したのは、江津市の地域おこし協力隊員として2015年8月に都内からIターンし、最初の任務で黒松地区の活性化に取り組んだ高島淑美さん(31)。着任直前の15年7月に見た神事の光景に魅せられた。

 沖合3キロの大島にある同神社本殿からご神体を御座船のみこしに移し、笛や太鼓が鳴り響く中、10隻を超える船行列が陸に向かって進む。砂浜には特設の鳥居が立ち、ちょうちんの明かりがともる海辺で、若者たちがみこしを担ぎ、威勢良く駆け回る。

 「水平線に沈む夕日の美しさに心を奪われたし、船にみこしを載せるなんて初めて見た」。地元の住民とは違った新鮮な感動に突き動かされ、「たくさんの人に知ってほしい」との思いが募った。

 賀美会長ら関係者の理解を得て企画を実現。自身が撮影した写真を使ったポスターやフェイスブックで積極的に情報発信した。審査会に併せて開いた反省会では「久々に見物客が多かった」との声も聞かれた。「地元では当たり前の祭りに光を当ててくれた」と感謝する賀美会長に、地区の住民でもある高島さんが笑顔で応えた。

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 今年は、写真コンテストのほかにも、観覧席の新設と無料ガイド、海上の船団を間近で見ることができる伴走船の出航など、趣向を凝らした新企画で魅力を発掘し、地区外からの見物客も目立ったという。

 外からの目線で生まれたアイデアを柔軟に取り入れ、親しみやすさを増した伝統の船神事。交流人口の拡大など新たな役回りにも期待が集まりそうだ。

2016年9月2日 無断転載禁止