秋山英宏の全米リポート 光る堅実な試合運び

無駄やリスクそぎ落とす

 約2時間半の降雨中断があり、再開後は錦織が主導権を握った。だが、雨が流れを変えたという見方を本人は否定する。「中断前の最後の2ゲームでリズムをつかみかけていた。あのまま行きたかった」。強がりではないだろう。

 新鋭ハチャノフの善戦で試合はもつれたが、筆者は錦織の勝利は揺るがないと見ていた。予選上がりの20歳は怖いものなしで強打を連発した。一方、錦織はショットの調子がいまひとつで、相手の勢いに押されていた。しかし彼には、試合運びの堅実さという武器がある。

 今季の錦織は取りこぼしが極めて少ない。試合後の会見でその要因を分析してもらった。

 「試合の運び方、集中すべき場面での集中が明らかによくなっている。落としてはいけないゲームをしっかり取ること、相手に一球でも多く打たせるディフェンス、そういう手堅さが備わってきている」

 まさにその手堅さが、ハチャノフには重圧となったはずだ。

 18歳でのツアー初優勝から8年間、錦織はこの堅実さを追い求めてきたに違いない。勝ったり負けたりでいいなら、時には無茶をしながら、好きなようにボールを打ち出すだけでいい。

 だが、より多くの勝利と高い勝率を手にするために、試合を進める上での無駄やリスクをそぎ落としたのだ。世界ランク7位と若いハチャノフの差は、そこにあった。

 (テニスライター)

2016年9月3日 無断転載禁止