(20)江津市黒松地区(下) 共助のまちづくり

「海べのサロン」で交流する住民たち。地域の結び付きを強める場としての役割を果たしている
 役割担い支え合う住民

 赤瓦の屋根がひしめき合う江津市黒松地区の民家の軒先に毎月1回、開店を知らせるのれんがかかる。

 黒松海岸と道一本隔てたまち並みの木造2階建ての空き家を改装し、黒松自治区推進協議会が4月に開設した「海べのサロン」。住民ボランティアの女性スタッフたちがコーヒーや茶菓子でもてなし、地域の交流の場として定着している。

 9月の開店日の2日には、午前10時のオープンに合わせ、お年寄りたちが続々と訪問。隣り合って座ると、近況報告や世間話で和気あいあいと触れ合った。

 初めて参加した佐々木芳子さん(83)は「独り暮らしで、誰とも話をしない日もある。おなかの底から笑って、元気が出た」と喜び、常連の奥部陽子さん(77)は「仲間と顔を合わせるのが楽しみ」と、すっかりくつろいだ。

 同サロンの運営を担う女性スタッフは、60~80代の9人。お年寄りたちが帰る際には、「また来てね」と声掛けを欠かさない。メンバーの一人の堂本道子さん(69)は「みんなの元気な顔を見ると安心する」と話す。笑い声でにぎやかなサロンは、住民間の結び付きも強めている。

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 7月上旬の大雨による被害を受け、黒松ふれあいセンターで8月下旬に開かれた防災班長会議。約200世帯を細分化した25班の班長らが一同にそろい、災害時の連絡網や防災資材の準備などをテーマに意見を交わした。

 班長会議を運営する同協議会防災部は、2011年3月の東日本大震災の後、地域の防災力を高めようと設立した。特徴は、昔の「隣組」に匹敵するかのような、きめ細かな組織体制。独居高齢者が増える中、「小班編成の方が一人一人の状況を把握しやすい」と岡野登部長(68)が説明する。

 津波を想定した防災訓練を毎年1回続けているほか、地区内の危険箇所を落とし込んだハザードマップを作成。今後は、各班内での連絡網作りも手掛ける予定だ。「防災対策で大事なのは、地域ぐるみで助け合う仕組みを整えること」。岡野部長の言葉に力がこもった。

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 同協議会の永井英治会長(67)は「笑顔の絶えない地域にしたい」を活動のモットーに掲げる。その支えとなるのが、サロン開設や防災班の設置などによる「共助のまちづくり」。住民の8人に1人が6部会のいずれかに加わり、役割を果たしている。

 今後は、空き家を活用したU・Iターン者の受け入れや、地域の特産品や名物メニューを扱う交流拠点の整備などを描く。小さな漁村で主役を演じ、支え合う住民たちの取り組みの成果に注目が集まる。

2016年9月3日 無断転載禁止