レッツ連歌(下房桃菴)・9月8日付

(挿絵・Azu)
 あかあかと日はつれなくも秋の風

タマと昼寝の顔をなでける   (出雲)朝倉 嘉三

倶利伽羅峠(くりからとうげ)越せば金沢
               (益田)吉川 洋子

部活の後の尽きぬおしゃべり  (江津)花田 美昭

泣いても後がない夏休み    (松江)岩田 正之

露重げなるリンドウの花(広島・北広島)堀田 卓爾

親を悩ます自由研究      (松江)佐々木滋子

オリンピックの興奮も冷め   (浜田)放ヒサユキ

料理雑誌はおせち特集     (大田)山形 俊樹

やがて悲しきリオの熱狂    (出雲)吾郷 寿海

木陰にそっと蝉(せみ)の亡きがら
               (飯南)塩田美代子

薄れゆく髪ていねいに梳(す)く(出雲)原  陽子

防波堤には干からびたゴズ   (松江)高木 酔子

蝉も金魚もクワガタも逝き   (益田)黒田ひかり

渚(なぎさ)に一つ切れたサンダル
             (出雲)はなやのおきな

真夏の恋は砂に埋めて     (松江)山崎まるむ

棚田に響くエンジンの音    (松江)河本 幹子

遠く聞こゆる和太鼓の音    (松江)室木 健伸

ススキ振り振り帰るあぜ道   (浜田)宮野もり子

神輿(みこし)降ろして飲む茶碗酒
               (益田)石川アキオ

ポケモン探しなおも続ける   (出雲)矢田カズエ

ヒグラシの声一段と冴(さ)え (江津)星野 礼佑

目尻のシワを妻は気にして   (松江)田中 堂太

なにかにつけて集う辛党 (沖縄・石垣)多胡 克己

暖簾(のれん)くぐってちょいと寄り道
               (浜田)勝田  艶

冷奴やめ鍋に変更       (松江)花井 寛子

脂肪蓄え寒き冬待つ      (松江)土江 ユミ

思いめぐらす遠きふるさと   (雲南)板垣スエ子


     ◇

 元禄2(1689)年7月15日、芭蕉は越中高岡を発(た)ち、倶利伽羅峠を越えて、金沢に入ります。洋子さんの句は、この史実をふまえた名作。

 金沢には10日滞在。この間、17日のさる句会で、「あかあかと」の句が披露されたことが、ほぼ確実に分かっております。

 この日は、今の暦に直すと、ちょうど8月31日。まさに「泣いても後がない夏休み」ですね。「自由研究」はどうなったことやら。

 滋子さんの句は、苦労するのが本人じゃなく、親のほうだというのがケッサク。

 さて、史上最多のメダルに湧いたオリンピックも幕を閉じました。「興奮も冷め」て、「やがて悲しきリオの熱狂」―。

 寿海さんの句は、やはり芭蕉の「おもしろうてやがて悲しき鵜舟哉(うぶねかな)」のパロディ。

 秋は滅びの季節―。「木陰に蝉の亡きがら」「防波堤には干からびたゴズ」。「蝉も金魚もクワガタも逝き」ました。「切れたサンダル」は、「砂に埋めた恋」の名残りか。

 真夏の恋といえば、私など、「夜明けのコーヒー、ふたりで飲もうと」なんて歌が、無性に懐かしく思い出されますが、それは人生の晩秋のなせるわざ、らしい。

 いや、寂しいことばかりではありません。秋は一方、収穫の季節。「棚田に響くエンジンの音」―。そして、「遠く聞こゆる和太鼓の音」は、豊作を祝う村の鎮守のお祭りにちがいない。「神輿降ろして飲む茶碗酒」のなんとうまいこと。

 もっとも、お祭りがあろうとなかろうと、辛党はなにかと群れたがるもの。「暖簾くぐって」、さて今夜は「湯豆腐」と行きますか。

 お若いかたは、もっと栄養を摂(と)って、来たるべき冬に備えてください。

     ◇

 がらりと趣きを変えて、次の前句は、

  はよ来いはよ来いはよ来いはよ来い

 上方落語の「野崎詣り」なんかをイメージしたのですが、それはあんまり気にされずに、でも、できれば陽気な五七五を付けてください。

  (島根大学名誉教授)

2016年9月8日 無断転載禁止

こども新聞