映画プロデューサーのささやかな日常(41)

この夏一番刺激を受けた「The Fin.」のライブ
 映画とは違うワクワクを求めて

   音楽ライブで感動共有


 この夏の映画界は『シン・ゴジラ』や『HiGH&LOW THE MOVIE』など各社が力を入れた邦画がヒットし、映画館も大盛況となりました。洋画だとヒトラーが現代ドイツにタイムスリップして混乱を巻き起こす『帰ってきたヒトラー』、ドキュメンタリーでは『FAKE』など社会派の作品も非常に見応えのある仕上がりで、映画ファンの間では話題となりました。

 仕事ゆえに休日も映画を見たりしていますが、1年間に公開される映画は1100本(!!)。無論全部をチェックすることなどできませんし、正直映画ばかりではさらなる新しい刺激やときめきに出合うことができません。お目当てのバンドがいることもありますが、実際に観客は何に感動しているのかの実地調査も兼ねて、多くの音楽ライブやフェスに出かけました。

 音楽業界はCDやDVDの売れゆきが減少傾向にある中で、ライブやフェスの観客動員やグッズの収入は年々上昇傾向にあります。日本では、ここ20年でフェス文化が根づきました。もともとフジロックフェスやロックインジャパンフェスなどはロックライブを行うものでしたが、昨今はジャズ、フォーク、アイドル、映画の屋外上映、食など多様なジャンルの野外イベントが「フェス」と呼ばれています。

 そんな音楽イベントに通うなかで、傑出した才能と出合うことができました。「The(ザ) fin(フィン).」です。The fin.は1980年代~90年代の英国・北欧ロックに影響を受けたシンセサウンドが特徴的な、平均年齢24歳の4人組バンド。2010年にネットで発表された楽曲が話題を呼び、海外からも問い合わせが殺到、15年には米国テキサスで開催されたフェス「SXSW 2015」へ出演し、その後英国ロンドンでのツアーも行い人気急上昇となっています。切ないメロディーを押し出しながらも、骨太なドラムとベースで支えられています。

 コクトー・ツインズやスミス、YMOなどを聞いて育ったもうすぐアラフィフ世代としては、懐かしさにあふれながらも、若い世代が洋楽を自分なりに吸収し、先鋭的かつポップな楽曲を作り出すその才能にしびれました。なんといっても驚きなのはその年齢。20代前半でありながら、80年代のロックを研究し、新たに再構築している頼もしい若者たちです。

 フェスやライブに行く理由は、スポーツ観戦の感覚と似ています。テレビやインターネットで見るだけではなく、リアルに今演奏されている生の音を味わい、同じ感覚を分かち合える仲間と感動を共有する。人々が感動を共有することができる文化が依然としてこの国で活況であり、古き良き音楽や映画からまた新たな才能が登場してくることにワクワクを覚えます。

 2020年の東京オリンピックに向けてさまざまな難題がありますが、間違いなく若者たちもこの国を見つめ直すきっかけになるでしょう。そんな時代のうねりの中で、映画プロデューサーとして自分が4年後に何ができるのか、そろそろ考え始めたいと思っています。

 (松竹映像本部 映画プロデューサー・石塚慶生、米子市出身)

2016年9月9日 無断転載禁止