秋山英宏の全米リポート 最後まで諦めずファイト

誇れるアスリートの姿

 第4セットは0-3と先行を許し、敗色が濃くなった。2日前のA・マリーとの5セットの熱闘がダメージとなり、錦織を苦しめていた。思考力が低下するほど疲れていたが、ガッツは失っていなかった。1ゲーム取り返した錦織は、試合開始のゴングを待つボクサーのように細かくステップを踏み、次のゲームに備えた。まだ諦めていないという無言のアピールだった。

 「ちょっと涼しくなって(体調が)戻ってきた」というが、疲れがとれるはずもなく、気持ちだけでボールを追っていたに違いない。ショットの精度は明らかに落ちていた。反応も遅れ、相手のボールを見送る場面も増えていたが、残り少ないエネルギーでファイトした。アスリートとしては当然だが、その当たり前のことができない選手も少なくないのだ。

 1-3からさらに相手のサーブをブレークしたが、これが最後の抵抗になった。ゲームセットの瞬間まで凜とした表情でファイティングポーズをとり続けた錦織は、満場の拍手に送られてスタジアムの通路に消えた。

 英語の会見では「マリーと5セット戦ったあと、このコンディションの中でまた4セット戦った自分を誇りに思う」と話した。「4セット戦えたのはよかった」くらいがこなれた訳だと承知しているが、直訳調が案外、彼の気持ちに近いような気がしてならない。

 (テニスライター)

2016年9月12日 無断転載禁止