紙上講演 共同通信社客員論説委員 平井 久志氏

共同通信社客員論説委員 平井 久志氏
 北朝鮮情勢と拉致問題の行方

   日本との交渉 背向けず

 山陰中央新報社の島根政経懇話会、米子境港政経クラブの定例会が28、29の両日、松江、米子両市内であり、共同通信社客員論説委員の平井久志氏(64)が「北朝鮮情勢と拉致問題の行方」と題して講演し、ミサイル発射や核実験を繰り返す北朝鮮の脅威と、膠着(こうちゃく)する拉致問題の行方を推察した。要旨は次の通り。

 北朝鮮は9月9日に通算5度目の核実験を行い、今回は「核弾頭の威力判定の爆発実験だった」と主張している。実験後、米国防総省は「彼らの主張に疑いの余地はない」とコメントしており、核弾頭がミサイルに搭載できるほど小型化に成功したと思われる。

 ミサイル発射と核実験を繰り返す理由は、米国との交渉を有利に進めるためだろう。11月の新大統領が誕生した後に実験を行えば、対話が難しくなる。北朝鮮側は、大統領選の前に「わが国の開発技術はここまで進んでいる」と見せつけ、交渉力を高める必要があると判断したとみられる。

 北東部にある実験場の豊渓里(プンゲリ)には、さらに核実験を行うかもしれない箇所が2カ所ある。米韓軍事筋は、次の核実験がいつでもできる状態にあるとみている。10月10日は労働党の創立記念日で、米韓合同軍事演習と重なる。6度目の核実験を含め、新たな軍事挑発を起こす可能性がある。

 拉致問題は、2014年10月に政府代表団が訪朝して以来、公式協議がない。一方、核とミサイルで北朝鮮は国際社会から追い込まれている。苦しい状況だからこそ、北朝鮮側は日本と交渉を持った方が、日米韓の連携にくさびを打ち込めると考えている。

 北朝鮮は日本人妻や残留者の帰国に前向きで、日本政府は先に解決できる問題に取り組むのも一つの手法だ。日本が制裁を強化したからといって、北朝鮮は日本との交渉に背を向けているわけではない。

2016年10月1日 無断転載禁止