レッツ連歌スペシャル(要木 木純)・9月29日付

(挿絵・Azu)
 家族にも言えぬ秘密を抱えつつ

が、今回の前句。

 私のように、SF映画や漫画の影響が強い人間は、実は宇宙人だったのだとか、人類の破滅を救う超能力者なのだとか、妄想があらぬ方向に暴走してしまいますが、連歌の世界では、そういった、ロマンチックで壮大な連想は、ちょっと合いませんね。まずは、日常のよくある情景から、付けていきましょう。

ゴディバのチョコは仏壇の奥  (益田)竹内 良子

夜中にこっそり食べる煎餅   (出雲)平井 悦子


 食いしん坊の、取るに足らない秘密。家族にも言えぬという程、大したことじゃあるまいにと、突っ込みたくなる面白みがあります。

種まき忘れ野菜購入      (出雲)石飛 富夫

気づけば蛇口いつも垂れてる  (松江)加茂 京子

眼鏡のままで顔洗う癖     (松江)岩田 正之

 これらの句は、自分の失敗を述べているだけではなく、家族との関係も浮かび上がってくるところが秀逸。ふだんは、家族に対して威張ったり、意見したりしている自分が、注意されたり、馬鹿にされたりするのは嫌。別にばれたっていいんじゃないの。でも、変な自尊心で隠し立てをするおかしさ。あるいは、いつも奥様にがみがみ言われているので、いちゃもんを付けられないか、びくびくしているのかも。

拾った子犬床下で「ワン」   (雲南)安部 小春

この壺(つぼ)と同じものをください  (松江)山﨑まるむ

 付句は、散文と違って、すべてを説明する必要はありません。これらの付け方は、読者にそうなった経緯をいろいろと推理させる余地があっていいと思います。

朝な夕なに視線感じて     (江津)星野 礼佑

 いつばれるか不安でたまらない。その一方で、秘密を抱えることに、背徳的な快感もまじっているような気もします。この句に限らず。

 深刻なことを詠んだものも、なぜか、連歌にすると、おかしみが出てしまう。自分や身近で、本当にこんなことがあって、ばれたら修羅場、たまりませんけどね。

DNAが一致したとは     (飯南)塩田美代子

年金すべて婚活に消え     (益田)石川アキオ

独り占めするこの当たりくじ  (江津)江藤  清

も一人孫が生まれるそうな   (雲南)妹尾 福子

支払期限せまる月末      (益田)黒田ひかり

仲人さんが家を間違え     (雲南)錦織 博子

あの娘(こ)と一緒のスナップ写真  (出雲)出川 武範

 早く告白して楽になりたい。でも、結局、隠し続けて、一生を終わる人もいる。

金婚式も無事に終わって    (松江)持田 高行

なるようにしかならぬ人生   (出雲)矢田カズエ

一人河原で石を投げてる    (出雲)飯塚猫の子

死んだらパソコン誰に託そう  (美郷)源  瞳子

 いいことだと思うけど、馬鹿にされそうで、恥ずかしい。

九十才の一人カラオケ     (松江)花井 寛子

月一で行くダンス教室     (江津)花田 美昭

東京五輪目指すマラソン    (松江)相見 哲雄

ノーベル賞の発表を待つ    (美郷)芦矢 敦子

あのゆるキャラの中は僕です  (浜田)三隅  彰

 内緒にしておいて、時が来れば、あっと驚かせたいという気持ちもあるかもしれないですね。

こっそり投句今日も落選    (出雲)原  陽子

指折りニヤリ七七を付け    (松江)土江 ユミ

 連歌に熱中することは隠すべきことではありません。ご家族にもぜひおすすめください。

 古典や故事を付けたものを最後に。前句に対して、ちょっとちぐはぐな感じの付け方に味わいがあります。

赤穂浪士は絶えずほほえみ   (出雲)山田 弘之

月を見上げて泣くかぐや姫 (出雲)はやなのおきな

実は先祖が石川五右衛門    (浜田)宮野もり子

戸を閉ざしては機を織るツル  (出雲)栗田  枝

            (島根大学法文学部教授)

2016年9月29日 無断転載禁止

こども新聞