女子ログ 帰ってきたホル

 初夏のある日、リビングでミャーミャーとかすかな鳴き声を耳にした。外に出るとエアコンの室外機の下から小さな鼻面がのぞいていた。思わず出張中の夫に電話した。「ホル坊が帰って来たよ!」。たぶん私は泣いていたと思う。

 ホルは、かつて私がかわいがっていたオスの野良猫だ。ある日、庭に迷い込んで来た。白と黒のブチでホルスタイン牛のようだからホルと名付けた。家には入れなかったけれど、大切な「食客」として餌と寝床を与えていた。穏やかで紳士的で、私が畑仕事に出る時は必ずついてきた。じっと座って待ち、「ホル坊や、帰ろうか」と声をかけると寄り添ってくる。夕日が長い影を落とす農道をのんびり一緒に歩くのは楽しかった。けれど昨年の冬の夜、不慮の事故に遭った。夫が「見ないほうがいい」と言って、庭の松の根元に埋めてくれた。

 「で、“帰って来たホル”はどこにいるの」出張から戻った夫が問うた。「あそこ」「これ三毛猫じゃないか。オスでもないし」。夫がモヘアの毛糸玉のようなのを抱き上げて「うちの子になるか?」「ミャー」で、話は決まった。名前はホル子。それから3カ月で体長は倍になり、今や毛糸玉の面影はない。ブチと三毛、オスとメスで違うけれど、時折ふと私を見上げる表情は、やっぱりあのホル坊に似ていて、思わず抱きしめてしまうのだ。

(大田市・ぽのじ)

2016年11月1日 無断転載禁止