女子ログ 私は誰?

 パンッ、手が強くたたかれる音で突然その場を切られる。次の瞬間、ぐっと目の奥までのぞき込まれ、「お前は誰だ」と尋ねられる。「私は山田花子です」「どこにいる」「松江城の広間の…」二つの質問に素早く答える。次は必ず「そこで何をしている」という三つ目の質問がくる。

 かつて受けていた演技の授業。頻繁に師と生徒の間で、それは繰り返された。私は誰、どこにいる、何をしている…。かくも基本的なことを意識する。どこかで常に意識し続けていれば、その役として場面にふさわしい感じ方ができる。そして、しっかりと感じることができたなら、自然と自分自身の中から動きやせりふがふさわしい形で導かれる。

 演技。演ずる技、技を以(もっ)て演ずる。役割の意識、感受の方法、表現の形は磨いてこそ技となる。しかし技の根本は常に自分自身。意識、感じること、表現、そのどれもが自分、つまりその人を通じてしかできないことである。

 別の誰かを演じることはなくなった生活を送っているが、その生活の中で時折、「私は誰」「ここはどこ」「何をしている」と自らに尋ね、答える。すると急に気分がスッキリ、すべきことがハッキリと見え、頭も体もシャキッとしてくる。

 生きている自分を意識する。至極当たり前のことが大切なのである。

  (松江市・effe)

2016年11月8日 無断転載禁止