(28)益田市真砂地区(中) 根付く活動

保育所で給食やおやつの食材として使われる野菜を出荷する住民たち
 里山保育農家にも活気

 益田市真砂地区の真砂公民館に11月下旬の朝、電動カートや荷車にたくさんの野菜を積んだ住民たちがやってきた。公民館職員の大本千恵さん(42)が出迎え、注文した野菜の種類や分量を確認すると、住民が自ら、保育所の名札が付いた出荷ケースに手早く収めていく。用途は、保育所の給食やおやつの食材だ。

 毎週月曜日と木曜日の朝、主に小規模生産の住民が持ち寄る野菜は、安全・安心な栽培方法に気が配られ、地元の真砂保育園など市内4保育所に直接運び込まれる。

 白菜やニンジン、ジャガイモなどをミニバイクに満載し、約2キロ離れた自宅から訪れた牧野チサノさん(79)は、約40戸の登録生産者の一人。「出荷すると、ちょっとした収入にもなるし、何よりも子どもが食べてくれるのがうれしい」と笑顔を見せた。

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 公民館が主体となり、取り組みが始まったのは2011年度。4保育所の調理担当者と生産者、大本さんたちが、旬の野菜の出荷時期や分量の見通しと献立の内容をすり合わせる「食材会議」で毎月1回顔を合わせるなど、需給のマッチングを図るためのきめ細かな仕組みが、事業の安定を支える。

 地域おこしの軸に食育や農業の活性化を据える同地区ならではの取り組み。住民にとっては、収入だけでなく、生きがいにもつながっている。出荷時のにぎやかな会話のやりとりが、活動の定着ぶりを伝えている。

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 「地域全体が園庭」「住民全員が保育士」をモットーにした「里山保育」を14年度から展開している真砂保育園。同地区中心部にある園舎を積極的に飛び出し、豊かな自然を相手にした遊びや住民との交流を通して、園児たちの自主性を引き出している。

 ユニークなのは、毎月1回、地区内の一つの地域に遠出する日を設けていること。11月15日は、下波田町を巡る「下波田の日」で、2~6歳の全園児12人が、同保育園から約3キロ離れた民家まで、思いのままに散策。民家の庭先では、集まったお年寄りたちと昼食も共にした。

 ご飯を炊くかまどに自分たちで火をつける挑戦をした園児たちを横目に、本田行尚園長(34)は「自然の中で工夫して遊ぶことで、子どもたちはたくましさを身に付け、住民との交流でコミュニケーション能力を高めることもできる」と効果を説く。

 中山間地域の特性を生かした農業振興や教育の取り組みは、確実に根付き始めている。

2016年12月2日 無断転載禁止