女子ログ 愛しのビーノ

 2年半前、京都の街での行動範囲を広げるために「原付き」を買った。乗ってたちまち原付きという乗り物に魅了された。自転車よりスピードが出て、体力はいらない。普通免許で乗れ、車よりも小回りがきき、維持費もガソリン代も安い。何より走っている時に受ける風が気持ちいい。買ったのは茶色のヤマハ・ビーノ。落ち着いた高級感のある色、丸みを帯びたかわいらしいデザインが気に入った。

 ビーノと京都をあちこち走った。週末には友達と観光地やカフェを巡った。アクセルをひねり、加速する。風をきり、行きたいところへ。やがてビーノは単なる生活の足ではなく、地上を走る「魔法の箒(ぼうき)」のような、非日常と自由を与えてくれる存在となった。

 先日、引っ越しを機にビーノを手放すことになった。引っ越し先には置く場所がない。幸い交通の便はいい所だし、どこかに置いておくには維持費がかかる。断腸の思いで友人に譲ることにした。

 引き渡し当日、朝のすがすがしい空気の中、友人宅まで30分、最後のドライブを満喫した。雲一つない青空の下を走っていたら、この時間を手放すのが惜しくなった。目的地が近づくと悲しくなった。原付きのある生活はとても楽しかった。

 慣れない関西での生活を楽しくしてくれた愛(いと)しのビーノ。またいつか乗れるといいな。

 (松江市出身、京都市在住・のんびより)

2016年12月28日 無断転載禁止