女子ログ 魔法の絵本

 去年の今頃、当時生後6カ月だった娘が初めて寝返りを打った。拍手をして喜んでいたら、夫が1冊の本を持ってきた。表紙には草原を走る少年の絵。表紙を開くと「愛する娘へ」と書いてあった。それは「幸せハンス」というグリム童話に夫が挿絵をつけた手作りの絵本だった。ロマンチストな夫は、何かの記念日に娘に渡そうと待っていたのだ。

 心のこもったプレゼントに感謝…と言いたいところだが、その時、私はすごく腹が立った。なぜなら、娘を産んでからの6カ月間、私は幸せな半面、すごくつらかったのだ。乳腺炎の痛みに耐えながら授乳し、娘をおんぶして家事をした。何度も抱き上げるうちにけんしょう炎にもなった。夫はその間、自分の部屋でゆっくり絵を描いていたのだ。そう思うと悔しくて素直に喜べなかった。

 その絵本は0歳児には難しく、しばらく棚の上に大事に飾られていたが、1歳を過ぎてから、時々読み聞かせるようになった。どうやら娘は気に入ったようで、ぐずっていても、この本を見せると機嫌がよくなる。まるで魔法の絵本だ。その実用性に気づき、最近ようやく夫に感謝できるようになってきた。

 でもなぜだろう。表紙の少年の笑顔を見ると、複雑な思いがよぎる。根に持ってるのかな。来年は家事と育児を分担し合って、もっとハッピーに過ごそう。

 (雲南市出身、香川県丸亀市在住・ゆかりんご)

2016年12月30日 無断転載禁止