レッツ連歌<2017年新春特集>(下房桃菴)・1月12日付

(挿絵・岡本 健一)
 あけましておめでとうございます。本年も引きつづき、よろしくお引き立てたまわりますよう、謹んでお願い申しあげます。

 順調に行けば、この6月の第4週、レッツ連歌は第555回を迎えます。そこで、「ゴーゴーゴー」のゴロ合わせで、およそ2年ぶりにみんなで楽しく集まろうという、そんな計画がいま持ち上がっております。楽しみですね。

 詳細はそのうちお知らせできることと存じます。

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 ところで、今回前句に使った「肩車」―。私たちは子どものころは「かたんま」と言っておりました。なんとなく「肩馬」の転訛(てんか)だろうとは思っていましたが、あらためて調べてみると、はたして、川端康成の「招魂祭一景」という短編にも、「肩馬」ということばが、ちゃんと使われておりました。地方によっては「かたんめ」とも言うようです。室町時代、ポルトガルの宣教師が編纂(へんさん)した「日葡(にっぽ)辞書」(日本語の意味をポルトガル語で説明した辞書)には「catacoma」ということばが採られていますが、これは「肩駒」と解釈できそうです。

 いっぽう「肩車」のほうも、江戸後期の狂言台本「大蔵虎寛本」や、一九の「東海道中膝栗毛」にも、早く用例が出てまいります。

 ちなみに、狂言といえば、「鈍太郎(どんだろう)」という愉快な曲がありまして。これに「肩車」ならぬ「手車」が出てきます。「手車」とは、2人の者が向き合って、たがいの両手を井桁のように組み合せ、その上にもう1人を乗せて歩き回る子どもの遊び。私たちは「おみこし」と言っておりました。それを狂言では、大人がやるからおもしろい!

 車や馬は、子どもを肩に乗せる姿にも、また「おみこし」の恰好(かっこう)にも、似ているわけでは決してない。が、これは便利な乗り物というほどの意味で使われているのですね。

 「膝栗毛」というのも実はそう。「栗毛」とは、すなわち馬のこと(たいがいの馬は栗色の毛をしています)。昔は旅をするのに、お金のある人は馬に乗って行きますが、そうでない人は自分の膝(脚)を使うしかない。が、それも膝という名の立派な馬だ、とシャレてみせたのが「膝栗毛」ということば。

 年配のかたはご存じでしょうが、タクシーに乗らないで(乗れないで)テクテク歩くことを、フザケて「テクシー」などと、かつてはよく言ったものです。それとまったく同じこと。時代は変わっても、人の考えることはちっとも変わらぬものですね。

 以上、前句にまつわるちょっとおもしろそうなネタを、いくつかご紹介してみました。ただし、連歌そのものとは、ほとんどなんの関係もございません。

 ごめんなさい。お屠蘇(とそ)気分がまだ抜けないようで…。

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 肩車して持たす福笹

大判や小判きらめく初日の出  (江津)星野 正子

人垣を越えて飛び交うお賽銭(さいせん)  (浜田)勝田  艶

亡き父と同じ思いの歳(とし)となり  (益田)竹内 良子

慣れた子は鴨居(かもい)でひょいと頭下げ(松江)相見 哲雄

お年玉もらって孫はえびす顔  (出雲)江角美代子

四月から一年生と目を細め   (松江)田中 堂太

孫じゃない息子なんだと同い年(奥出雲)松田多美子

元気よく遊ぶパンダにプレゼント(浜田)放ヒサユキ

去年より重くなったとえびす顔 (大田)杉原サミヨ

商いを孫の代まで受け継いで  (松江)野津 重夫

先月はモミの木だった飾りつけ (益田)黒田ひかり

宝恵駕籠(ほえかご)にイキな姐(ねえ)さん勢揃(せいぞろ)い

               (松江)岩田 正之

誇らしい名前がついた新元素  (雲南)板垣スエ子

すいているのはどっちだと聞いている

               (益田)石田 三章

のど痛いお手て痛いとベソをかき

            (兵庫・明石)折田 小枝

斜に構えまぶしい朝日避けながら

              (鳥取)上山いっぺい

次はボク早くしてよとお兄ちゃん(浜田)松井 鏡子

去年まで抱っこしていた美保神社

            (沖縄・石垣)多胡 克己

迷子ですこの子どこの子どなたの子

               (飯南)塩田美代子

受験の娘(こ)元旦だけは巫女(みこ)になり (松江)河本 幹子

ジイさんはこれが最後と踏ん張って

               (江津)花田 美昭

初詣写す親子の自撮り棒    (益田)石川アキオ

ジジババの待ち受け用に送信し (出雲)野村たまえ

布はよいつうよ戻ってきておくれ(美郷)芦矢 敦子

父さんも父さんにしてもらってた(美郷)源  瞳子

両足で首を挟んで舵(かじ)を切り   (松江)神田の 狢

居並んだ学生巫女の華やかさ  (松江)森  笑子

しっかりと握っていろと千鳥足 (松江)川津  蛙

これならばいくら飲んでも捕まらぬ

               (松江)若林 明子

初孫は十年待った宝物     (出雲)山下 孝子

背の低い親でゴメンな我慢しろ (出雲)吾郷 寿海

人込みをかき分けて行く酉(とり)の絵馬(松江)高木 酔子

ほろ酔いの珍道中を叱られて  (出雲)朝倉 嘉三

高額の熊手をねだる子をなだめ (松江)三島 啓克

降ろさせて露天へ踵(きびす)返す孫   (益田)可部 章二

バアさんや何度も聞くな大丈夫 (安来)根来 正幸

正月をパジャマで過ごす独り者 (雲南)渡部 静子

オモチャでもないしお菓子も付いてない

             (出雲)はなやのおきな

年男ジジと呼ばれてえびす顔  (松江)永瀬 秋風

揉(も)まれても快感となる人の波  (松江)花井 寛子

親子して仰ぐ大社の大鳥居   (出雲)原  陽子

三が日禁酒解かれてえびす顔  (雲南)妹尾 福子

采配にして得意げな武者気取り (江津)星野 礼佑

禿(は)げ頭鈴と小判に叩かれて   (江津)岡本美津子

五代目の上に乗ってる六代目  (松江)持田 高行

春一番コケコッコーの声を聞き (浜田)滝本 洋子

恵比寿さま歩くリズムに乗って揺れ

               (益田)吉川 洋子

正月におとり捜査の指令出て  (松江)山崎まるむ

今年こそオネショが治りますように

               (出雲)藤原 昌子

若くして逝った夫の写真帳   (出雲)矢田カズエ

じいちゃんは髪を抜かれて笑ってる

               (松江)水野貴美子

鯛跳ねて大判小判ザックザク

            (埼玉・所沢)栗田  枝

ジイはもうムリだよパパに任せよう

               (松江)庄司  豊

耳を引きパパ停めたとこアッチだよ

               (美郷)吉田 重美

伝統の演技も見せる親子猿   (出雲)鬼村 吉郎

コイキングここにいたよと喜んで(松江)学園 花子

幸せが肩に食い込む心地よさ  (出雲)出川 武範

親の背を越えて生きよと願をかけ(雲南)錦織 博子


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 同じ前句から、こんなにいろんな連想が生まれるものなのですね。みなさんの頭の柔らかさに脱帽です。

 その一方で、スエ子さんの「新元素」なんかは、「肩車」や「福笹」となんの関係があるのかと、不思議に思われるかもしれません。実をいえば、なんの関係もないのです。ただ「ニホニウム」という誇らしい名前が、正月のめでたい気分になんとなくふさわしい、というだけのこと。

 静子さんの「パジャマで過ごす」にいたっては、正月にふさわしいどころじゃありません。でも、そういう人もいないわけじゃない。

 まるむさんの「おとり捜査」は、なぜ正月なのか、もっと分からない。そもそも、子どもに福笹を持たせて、油断させておいて犯人を逮捕なんてこと、ありうるのでしょうか。

 でも、こんな付けかたもアリなのです。前句に付けよう付けようと気張らないで、肩の力を抜くことも、たまにはいいものです。

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 ここで今年は、久しぶりに虫食い連歌で遊んでみましょう。

 次の□の部分に適当な文字を入れて、句を完成させてください。□の部分には、漢字も平仮名も片仮名も入ります。

 去年の入選句(作者名は省略)の中から選んでみました。といって、記憶力を試そうというわけではありません。いや、忘れているほうが実はよいのです。いまはじめて、みなさんご自身が句を作るつもりで、挑戦してみてください。


【1】(前句)  だれにでも噛(か)みつく犬は嫌われて

   (付句) お□様は呼ばぬ女子会

【2】(前句)  にがにがしくもめでたかりけり

   (付句) □額のおせちが並ぶ祝い膳

【3】(前句)  妻がいるとき届く宅配

   (付句) 台無しになってしまった□□□□□

【4】(前句)  はよ来いはよ来いはよ来いはよ来い

   (付句) □□□□の母さんひとりヤキモキし

【5】(前句)  心ときめく金曜の夜

   (付句) お父さん□□山が出ましたヨ

【6】(前句)  はじめてのお使いに行く一人っ子

   (付句) □□質問される父さん

【7】(前句)  後悔先に立たぬ初恋

   (付句) □□□□を落としすぎたが運の尽き

【8】(前句)  きびだんごたった一つで家来にし

   (付句) 首をかしげている□□町

【9】(前句)  泣きながら走って帰るランドセル

   (付句) □□もらうと先生が言い

【10】(前句)  包丁は無理ハサミなら使えます

    (付句) □□検定また不合格


 実はこの問題、先日、あるパーティの余興として出題したものです。20人ほどの参加者のうち、3問正解した人が最優秀賞を獲得されました。

 みなさんは何問おできになりますか。正解は、次回のこの欄に掲載します。

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 次の前句は、

  蝶ネクタイの似合う手品師

 そういえば、ふつうのネクタイをしたマジシャンというのは、あまり見かけません。オシャレの他にも、なにか理由があるのでしょうか。

 前句が七七(短句)ですから、これには五七五の句(長句)を付けてください。

              (島根大学名誉教授)

2017年1月12日 無断転載禁止

こども新聞