世事抄録 生まれて初めてみるもの

 昨夏のことである。ある暑い日の午後、斐伊川沿いの直線道路を車で走っていたら、青空の先、遠くの景色が急にかすんで見えた。最初は野焼きの煙か何かかと思ったが、それにしてはあまりに広範囲だ。煙じゃないな、などと思いつつハンドルを握っていると「あっ」。遠くの山側で雨が降っていたのだ。

 その瞬間だった。四、五百メートル先で路面の色がくっきりと変わっているのに気が付いた。定規で線を引いたようにきれいな境目である。運転中で動画を撮るわけにもいかず、車内で一人ジタバタしながら境目を越え、土砂降りの雨の中に突っ込んだ。ワイパーを最高速で動かし、10分ほど走ったら、突然雨はやみ、再び乾いた路面に出た。

 生まれて初めて見た雨の境目。テンションマックスになり、誰かに話したくてしょうがなかったが、すごいっ! 感動!!などとありきたりな言葉しか出てこず、この心奪われる体験をうまく人に伝えられなかった。

 その後、冷静になって思ったのは、この年になってもまだ生まれて初めて見るものがあるんだなぁ、ということだった。これからも先端技術の開発や自然環境の変化などで、初めて見たり触れたりするものが出てくるんだろう。感動や驚きが私のやる気の源になる。今年も新たな発見をするためにできるだけ出歩きたいものだ。

(雲南市・マツエもん)

2017年1月15日 無断転載禁止