トランプ劇場

 「トランプ劇場」本編の幕が開く。衛星放送で見ていた米国ドラマの続編のような気さえする。ホワイトハウスの内幕を描く人気シリーズには、陰謀や策略、さらに大統領の不倫まで出てくる。ある意味、それが「自由の国」米国の強さなのだろう▼政策論議はそこそこに、中傷合戦を生き残る形で新大統領に就くトランプ氏。ホームドラマや恋愛ものを見慣れた日本なら致命傷になりかねないスキャンダルも、呑(の)み込むしたたかな支持があるようだ▼万事が異例ずくめだけに、就任式を世界が固唾(かたず)を呑んで見守る。会場周辺は大観衆が見込まれる一方、式典を欠席する議員や抗議デモも伝えられる。8年前のオバマ氏の時とは違い、高揚感よりも米国民の「分断」を印象づける▼直前の調査では、好感度の方が低い異例の船出となるが、本人は「間違い」と主張。あくまで強気で「米国を再び偉大にする」と英雄のような大統領を演じる構え。就任演説や、初日に出すとされる大統領令の内容に注目が集まる▼既存のメディアには頼らず、むしろ敵に回してツイッターで頻繁につぶやく戦術。支持者らに直接伝わるそのメッセージは単刀直入で具体的。標的を名指しして示し、スローガンは感情に訴え繰り返す。大衆の心理を心得た手法に見える▼ドイツの劇作家ブレヒトの作品に「英雄のいない国は不幸だ」「英雄を必要とする国が不幸なんだ」という台詞(せりふ)がある。閉塞(へいそく)感(かん)が生んだ異色の大統領が、何をどう変えていくのか、冷静に見極めたい。(己)

2017年1月21日 無断転載禁止