文科省天下り問題/他省庁含め徹底調査を

 文部科学省が元局長の大学への天下りを組織的にあっせんしたとされる問題で内閣府の再就職等監視委員会が調査結果を公表し、国家公務員法違反と認定した。文科省は関与を認定された事務方トップの事務次官や当時の人事課長ら7人の懲戒処分を発表した。次官は引責辞任した。既に退職した元次官にも給与の一部自主返納を求める。

 旧防衛施設庁の官製談合事件などを背景に天下りが官民癒着の温床になっていると批判が強まり、2007年の国家公務員法改正で公務員による再就職のあっせんや在職中の求職活動などが禁止された。監視委は規制違反に目を光らせる第三者機関として12年に設置され、違反の認定や省庁への指導を行っている。

 これまでにも国土交通省や総務省などで違反行為が明らかになっているが、次官の辞任にまで発展した例はない。通常国会で野党の追及により補正予算案や新年度予算案の審議に影響が及ぶのを避けるため幕引きを急ぎたい政府の思惑が強く働いたとみられている。だが文科省には疑わしい事例がまだあるという。

 さらに文科省だけなのかという疑問がある。幕引きは論外だ。役所とのパイプを確保したい企業などが天下りを受け入れているのは公然の秘密とされる。首相は他省庁でも調査するよう指示したが、省庁任せにせず、監視委を中心にきちんと態勢を組み徹底的に実態を洗い出すべきだ。

 今回調査の対象となったのは、文科省で私学助成などを管轄する高等教育局の元局長。15年に退職し約2カ月後、早稲田大大学総合研究センターの教授に就任した。それを前に人事課は早大に受け入れを打診したり、元局長の経歴に関する書類を送ったりした。元局長自身も、在職中に履歴書を送っていたとされる。

 天下り規制が強化されて以降に確認された、あっせんや求職活動といった違反はいずれも個人の不正で、今回のような組織ぐるみのあっせんの例は見当たらない。しかも監視委の調査に文科省側は虚偽の説明をしたほか、発覚しないよう口裏を合わせるなど隠蔽(いんぺい)工作をしていたという。

 これ以外に辞任した次官が関わった案件を含め天下りのあっせんが37件あり、うち9件は国家公務員法違反の疑いがあると監視委は指摘した。民間企業の監督権限をほとんど持たず天下りとは無縁ともいわれた文科省だが、問題の根は深そうだ。背景には「国立も私立も大学は身内」との認識もあったとされ、それを変えることも必要だろう。

 天下りは行政をゆがめ、国民の不信を招く。規制強化により、露骨なあっせんなどは鳴りをひそめたが、省庁が監督や許認可の権限をバックに企業・団体に「指定席」を持ち、OBに代々引き継がれる構図が残っているというのが大方の見方だ。定年まで勤められる民間と違い、定年前に退職を迫られる官庁の人事上の慣例がなくならないと根本的解決にならないとの声も聞くが、文科省の問題を契機として実態を見極めたい。

 他省庁でも調査するのは当然のことだが、それが省庁に報告させるような形で行われれば意味がない。おざなりな報告に終わる可能性がある。第三者の視点で厳しくチェックするべきだ。

2017年1月21日 無断転載禁止