新大統領の座談会

 出版文化に現れるお国柄。日本の雑誌にあって、欧米の雑誌にないものは「座談会」だという。座談会という掲載スタイルを発明したのは、「文藝春秋」を創刊した菊池寛という説もある▼何人かが集まって好きに話すと、自然に議論が広がる。相手の顔を見ながらその場に最適な話題を探すので調和が生まれやすい。それが臨場感につながって、読者はまるでその場にいるような錯覚を起こし、話に引き込まれていく▼編集者はメンバーをそろえるのが仕事。あとは任せておけばよい。人選がカギだが、それもなんとなく芋づる式にたどっていけば、落ち着くところに落ち着く。「連歌」のように相手の意を酌みつなげる座談は日本人に合っている▼一方、欧米にはテーブルスピーチの様な自己主張の文化があるが、面と向かうとしばしばぶつかり合いになる。米大統領選討論会でも、泥仕合の非難合戦が繰り広げられた。その仕掛け人トランプ氏が大統領就任演説の場に立った▼エリート政治家が潤ったが、国民の職は失われ工場は閉鎖された。「今こそ米国を再び偉大にしよう、夢を見よう」。乱暴な物言いでも、アメリカ社会の閉そく感を代弁する風雲児に集まる喝采は、侮れない「アメリカの現実」だ▼選挙公約で抱えた矛盾を、現実路線に修正できるのか。大統領がおとなしく座談会に収まる姿は想像しにくいが、国内外の声に耳を傾け、調和と協調を求めなければ早晩行き詰まるだろう。超大国アメリカでも、いや、だからこそ、である。(裕)

2017年1月22日 無断転載禁止