米通商政策見直し/国際連携強め対応せよ

 米国のトランプ新政権は、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱と、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を正式に発表した。貿易が経済の柱である日本への影響は大きく、日本企業に打撃が予想される。政府は、米国の通商政策転換に伴い利害が一致するほかの国々と連携を強め、影響を最小限に抑えられるよう全力を挙げるべきだ。

 トランプ大統領は選挙を通じて「米国第一」「雇用を取り戻す」と主張し、関税を抑えて米国への輸出を容易にするTPPやNAFTAの通商協定を強く批判してきた。大統領就任の直前にトヨタ自動車のメキシコ投資を非難したのも、この主張の一環だ。

 今回、就任初日にその離脱と再交渉の意向を正式表明したことで、保護主義的な公約を実行に移した格好だ。

 特に、日米をはじめとする12カ国が合意し、各国の批准手続き段階にあったTPPは、米国が抜けることで発効の見通しが立たなくなった。

安倍晋三首相はTPPを成長戦略の柱としているだけに米国の翻意に期待してきたが、その望みはほとんどついえたといえよう。経済運営へのダメージは避けられない。

 しかし、「将来の通商ルール」であるTPPと異なり、NAFTAは、すぐにでも日本企業への実害があり得る。

 米国とカナダ、メキシコの間で結ぶ同協定は1994年に発効。関税ゼロで米国へ輸出できる利点を生かそうとトヨタなど自動車・部品メーカーを筆頭に多くの日本企業がメキシコへ進出している。

 もしルールが変わり、その利点が損なわれることになれば、これまでの投資を含めて日本企業の打撃は計り知れない。生産拠点の配置戦略で、北米だけでなく、世界的な見直しを迫られよう。

 NAFTA見直しについて新政権の商務長官となるロス氏は最近、「すべてが対象になる」と語っており、再交渉は幅広い分野へ及ぶ見通しだ。具体的には、一定割合の材料・部品を域内で調達すれば関税優遇を受けられる「原産地規則」などがあり得る。米国は、規則の水準の低さが自国へ不利になっていると受け止めているもようで、日本も目が離せない。

 今後、再交渉はカナダ、メキシコ政府との間で進むとみられるが、日本政府は関与を積極的に探るべきだ。自国経済へ被害が出かねない両国とは対米国で協力できるし、米国内の産業界と足並みをそろえることも可能だろう。自動車産業などでは国境を越えたサプライチェーン(部品の調達・供給網)が築かれており、協定見直しが米国への輸入コスト上昇と市場縮小へつながる恐れがあるためだ。

 さらに対米生産拠点として大手自動車メーカーがメキシコ投資を進めているドイツなどとも利害が一致するため、連携していく必要がある。

 トランプ政権は通商戦略において、多国間より2国間の協定を重視する姿勢を示しており、TPPに代わる日米の自由貿易協定(FTA)交渉を求めてくる可能性がある。

 その場合、NAFTAの見直し内容と日米間の協定は相互に影響し合うことが予想され、一筋縄では進まないだろう。しかし日本政府は、むしろトランプ政権の保護主義を抑える好機ととらえ、粘り強く交渉に臨んでもらいたい。

2017年1月24日 無断転載禁止