秋山英宏の全豪リポート どん欲に次の勝利求めろ

使いたくない「善戦」の言葉

 善戦という言葉は使いたくない。ほしかったのは勝利の二文字だけだったはずだから。

 組み合わせが決まると、元王者との4回戦が最大の山と見る向きが多かった。記者会見でも毎度、フェデラー戦をにらんでの質問が飛んだ。錦織は「テニスをしていて楽しいと思える相手」と社交辞令で返したが、「もっと楽な選手とやれるなら、そっちを望むけど」という言葉にこそ本音が込められていた。

 2010年、錦織は全仏でジョコビッチに完敗、ウィンブルドンではナダルに敗れた。まだ20歳。大舞台で素晴らしい経験を積んだとも言える。

 会見で尋ねた。「ドロー(組み合わせ)運がいいのか悪いのか、どちら?」。答えは「確実に悪いドローですね」だった。彼は、勝って、のし上がることしか考えていなかった。13歳で渡米した瞬間からプロを目指す生き残り競争に参戦し、結果が全てと知っていたのだ。

 第1セット5-2の場面で戦術を変えずにストローク勝負に徹していたら、第5セット出だしの2ゲームで1段、ギアが上がっていたら、善戦以上のものを手にしていただろう。

 だが、「もしも」を論ずることには意味がない。敗者には何もくれてやるなという言葉もある。今の彼にできるのは、どん欲に次の勝利を求めることだけだろう。

2017年1月24日 無断転載禁止