中国経済/二つのリスクに警戒必要

 中国の2016年の実質国内総生産(GDP)は前年比6・7%増で、26年ぶりの低水準だったが、政府目標の6・5~7%に収まった。中国経済は安定成長に移行しつつあるようにも見えるが、人民元の下落と過剰債務という二つのリスクがのしかかっており、対応を誤れば危機につながる懸念がある。警戒が必要だ。

 16年10~12月期は前年同期比6・8%増で、前期の6・7%増より高い伸びとなった。デフレ懸念もこのところ薄らいでおり、16年12月の消費者物価指数は前年同月比で2・1%上昇した。各種の経済指標は表向き堅調を示しているように見える。

 しかし、16年の経済成長の内実は、問題が多い。民間投資が低迷して景気の足を引っ張ったが、公共投資の拡大などの景気刺激策と不動産市況の過熱に支えられて失速を免れた形だ。特に不動産開発投資は前年比6・9%増と、15年の1・0%増から大きく伸びた。不動産バブルに依存した危うい成長で、中国政府も不動産バブルの抑制を優先課題としている。

 懸案である鉄鋼や石炭の過剰生産能力の削減も思うように進んでいない。過剰生産の調整に大きな困難が伴うことは想定できる。むしろ今、中国経済の大きなリスクと懸念されているのは、人民元相場の大幅下落と資本流出、そして民間債務の膨張だ。

 16年末の人民元相場は前年末に比べて6・6%下落し、05年に事実上の固定相場制から管理変動相場制に移行してから最大の下落率を記録した。この元安に伴い中国からの資本流出が続き、それがまた元安圧力を高めている。

 中国当局は過度の人民元安を防ぐため元買いドル売りの為替介入を繰り返しているとみられる。介入の元手となる外貨準備高は減少が続き、16年末に3兆105億ドル(約340兆円)まで減った。ただ、トランプ米大統領は中国を「為替操作国」に指定すると発言している。

 外貨準備のうち取り崩して為替介入に使えるのは、ほぼ米国債だけではないかとの見方がある。中国の米国債保有額は1兆493億ドルまで急減している。今後、介入資金が底をつけば、投機筋の通貨アタックに当局が対抗できなくなり、人民元が急落する事態も予想される。その場合、世界の金融市場に激しい混乱が起きるだろう。

 民間部門の債務が急拡大しているのも大きな問題だ。国際決済銀行(BIS)によると、中国の民間債務残高の対GDP比率は16年3月末に210%に達し、日本のピークである1995年末の221%に迫っている。

 この債務のうちかなりの比率が金融機関の不良債権になっているとみられ、日本総合研究所の試算では約190兆円に上る。この状況で不動産バブルが崩壊すれば、中国経済は日本のバブル崩壊後のような深刻な不況に陥る恐れがある。

 中国政府は今年の経済政策として積極的な財政政策を続ける一方、不動産バブルへの警戒などから金融政策は「穏健で中立的」とする方針を示している。景気の失速を回避すると同時に人民元の急落を食い止め、不動産バブルを管理する困難な目標を達成できるかどうかが鍵だ。

2017年1月26日 無断転載禁止