成年後見制度/地域ぐるみで課題克服を

 社会全体が急速に老いていく中、認知症などで判断能力の乏しい人に代わり、財産管理や契約などを担う成年後見制度が重みを増している。しかし2000年の制度導入から利用は思うように広がらず、後見人が管理を任された預貯金を着服する事例も後を絶たない。このため国は利用促進と不正防止に向け、制度の立て直しを急いでいる。

 内閣府の有識者委員会は先に、市区町村が中心となり司法、福祉、医療などの関係者が連携するネットワークや相談窓口の整備を柱とする制度改善策の素案をまとめた。これを踏まえ政府は16年度内に基本計画を策定し、市区町村にそれぞれ実施計画をつくるよう求めていく。

 制度の利用者は15年末時点で約19万1千人。厚生労働省の推計で65歳以上の高齢者のうち認知症の人が12年末に462万人、軽度の認知障害の人も400万人いることを考えると、まだ一握りにすぎない。制度にたどり着けない人がかなりいるとみられる。

 身寄りのない高齢者も増えており、支援が必要な人を少しでも早く見つけ、適切な制度利用につなげていくことが求められる。不正防止や後見人の育成も急がなければならず、地域ぐるみで課題克服に取り組みたい。

 成年後見制度は、認知症のほか知的障害や精神障害などで物事の判断能力が十分ではない成人に代わり、家庭裁判所に選任された後見人が銀行口座の管理や介護サービスなどの契約をする。本人や家族が家裁に申し立て、家族や親族のほか弁護士、司法書士、社会福祉士といった専門職が後見人になることが多い。

 社会福祉協議会などの法人や、研修を受け市民後見人候補に推薦された地域住民が選任されることもある。昨年5月に施行された制度利用を促進する法律は市民後見人の育成や後見人の不正防止を求め、政府が基本計画を策定すると定めた。

 有識者委が素案の柱に挙げた地域のネットワークは、縦割りになりがちな自治体や裁判所、弁護士会、社会福祉団体、医療関係団体などから成る協議会を設置して連携を図る仕組み。相談窓口に足を運べば家裁への申し立てや後見の実施など、さまざまな支援を受けられるようにする。1人暮らしの高齢者を見守る役割も期待されている。

 これに加え、重要なのが不正防止の徹底だ。最高裁によると、後見人による横領などは15年の1年間で521件、被害総額29億7千万円。うち弁護士ら専門職の不正は37件1億1千万円で、件数で過去最多となった。

 後見人に占める専門職の割合は年々増え、7割近い。弁護士であっても監督人を付けたり、家裁の指示書なしにまとまった額の払い戻しを受けられない後見制度支援信託の利用を促進したりする対策が取られている。後見人の責任や義務をよく理解していない家族・親族の不正も多く、ネットワークによる重層的なチェックが必要になる。

 既に成年後見支援センターなどを運営して制度の普及や市民後見人の育成を進めている例もあるが、自治体の対応にはばらつきがある。全国どこでも安心して制度を利用できる環境づくりが求められており、地域が果たすべき役割は大きい。

2017年1月27日 無断転載禁止