天皇退位論点整理/後世の検証考えた議論に

 天皇陛下の退位に向けた法整備を巡り、政府の有識者会議は論点整理を公表した。将来の全ての天皇を対象とするより、陛下一代に限り退位を可能にする方が望ましいとの考えを示し、政府が検討の軸に据えている一代限りの特別法を後押しする内容となっている。これを受けて各党は党内議論に入り、2月中旬をめどに意見を集約する。

 衆参両院の正副議長は各党の意見を個別に聞き取り、3月中に国会としての見解を示す。議長側は「静かな環境」で議論するため当面、意見聴取の議事録を非公開とする意向という。これには異論もあるが、皇室典範改正を主張する民進党も含め、与野党は議長主導で一定の合意形成を図ることでは一致している。

 ただ懸念材料がいくつかある。政府、与党内では、特別法制定の根拠規定を典範の付則に置く案が検討されている。一代限りのままで典範本体にも手を付けないが、制度化に近い形を整えることで民進党を説得する腹積もりのようだ。また新天皇即位や新元号発表の日程が取り沙汰されるなど議論をせかすような空気が広がりつつある。

 民進党なども対立は避けたい。野党の抵抗で法整備が遅れたと世論の反発を招きかねないからだ。しかし憲法と特別法の関係には多くの疑問が投げ掛けられ、女性・女系天皇や女性宮家の創設という課題もある。しっかり議論する必要がある。

 論点整理で有識者会議は将来の全ての天皇を対象とする案について「退位の要件を定める必要があるが、具体的な要件の規定は困難」とするなど、多くの課題があることを強調。一代限りの方が課題は少なく「そのときの皇室の状況や国民の意識、社会情勢などを踏まえて判断できる」といった利点があるとした。

 特別法の根拠規定を典範の付則に置く案にも言及している。これは特別法と典範との関係を明確にするためで「天皇は特別法の定めるところにより退位できる」などの条文が考えられる。皇位継承は典範の定めによるとする憲法に照らし、典範ではない特別法による退位は違憲の疑いがあるとの意見が専門家の間に根強く、特別法の正当性を強調する狙いがある。

 さらに典範の付則にこうした条文があれば、今後の退位にも適用することになり、典範改正で恒久制度化すべきだと主張する民進党も受け入れやすいとみられている。

 だが問題は残る。有識者会議は退位の要件-つまり天皇本人の意思のほか、高齢・健康など客観的な事情や皇室会議などの手続きといったものを定めるのは困難とし「要件を定めた場合、制度が硬直的になり、恣意(しい)的な退位や時の政権による強制的な退位が可能となる」とも説明する。

 ただ、逆に「要件を定めておかないと、恣意的な退位などの恐れは強まる」とする専門家の声も出ており、まだ詰めなければならない点は多い。女性・女系天皇などの課題も、少なくとも今後の議論に道筋を付ける必要がある。

 合意形成を優先するあまり国民から駆け引きに映るようなことは避けなければならない。今後の各党の党内議論や国会としての見解取りまとめ、さらに法案審議という全過程が後世の検証に付されることを忘れないでほしい。

2017年1月30日 無断転載禁止