訪日外国人観光/山陰の観光資源を生かせ

 訪日外国人旅行者が昨年2400万人を超え、過去最高となった。円安で大幅に増加した一昨年に比べれば伸び率は鈍化したが、日本での買い物や文化、歴史に対する関心が高まっていることをうかがわせる。山陰両県も豊かな観光資源を生かし、訪日観光を地域振興に結びつけていくべきだ。

 山陰両県を訪れる外国人旅行客を増やすため、昨年4月両県の官民で山陰インバウンド機構(観光地域づくり法人)を設立。外国人向けに専用ホームページを立ち上げて山陰の観光情報を発信する事業などを手がけている。

 しかし海外での旅行展示会など支援事業で機構と両県が重複したり市町村との情報共有が不十分など課題も指摘されている。同機構の松尾周一郎事務局長は「両県との役割分担などで調整していく必要性は感じている」という。

 同機構では山陰の外国人宿泊客を東京五輪・パラリンピックが開催される2020年までに40万人と現在の3倍に増やす目標だ。

 島根、鳥取両県を合わせた外国人宿泊客は昨年10月末で12万5千人で過去最高だった一昨年同期を上回った。しかし日本人を含めた宿泊客に占める外国人の比率は2%(15年)と全国平均13%を大きく下回り、全国最下位クラス。

 原因は主に知名度の低さにあり、海外と結ぶ国際定期空路が少ないなど交通の利便性が低いことも加わる。国内人口が減少する中で訪日外国人による観光需要は成長が期待されているが、山陰ではまだなじみが薄く取り組みも遅れている。 

 外国人が山陰を訪れてみたくなるような仕掛けが必要であり、そのために思い切った対策を打ち出すべきだ。

 成田や関空など主要国際空港から遠く新幹線も通じていない山陰では交通の不便を補う対策が求められる。最近の訪日外国人旅行は団体から個人に移っており、個人客を対象にJRとバスを自由に乗り継げるフリーパスを発行して山陰各地を安価で周遊できるようにしてみてはどうか。

 外国人観光客を呼び込むために外国から山陰を見る視点も取り入れたい。観光に携わる人材を海外に送り出し、海外から山陰がどう見られているかを体験してもらう「観光留学」に公的支援を導入する方法も検討してほしい。

 松江市で旅館を経営している松崎滋社長は「東京や大阪を追っても仕方がない。田舎ツーリズムや漁業体験など山陰にあるものを観光資源として徹底的に生かし切る発想が必要だ」と話す。

 両県宿泊客の国・地域別内訳は韓国が最も多く次いで台湾、香港、中国などの順。このうち香港からは米子や広島、岡山空港に香港便が就航した効果で急増した。

 日韓関係悪化の影響は今のところ少ないが、外交問題などで関係が冷え込む場合などに備えた対策も考えておく必要もあるのではないか。

 山陰の外国人宿泊者は松江市を中心とする中海圏に集中しており、地域的に偏っている。有名観光地が集中しているためだが、特に訪日客が少ない島根県西部ではクルーズ船を受け入れる浜田港や高速道路などインフラ整備が急がれる。国も地域活性化策として力を入れる訪日観光に両県の積極的な対応を求めたい。

2017年1月28日 無断転載禁止