仕掛け学の極意

 警察官が休憩などで立ち寄れば無料もしくは割引してドーナツを提供している店が米国にある。世界最大のドーナツチェーン、ダンキンドーナツの販売戦略だそうだ。なぜ警察官だけなのか。「そこに商売繁盛の仕掛けがある」と種明かしするのは、仕掛け学を提唱する松村真宏大阪大大学院准教授▼日本に比べて治安が良くない米国では警察官がいてくれることは心強い。ドーナツを求めて警察官が足しげく通ってくれれば店のガードマンとなり、安全な店として他の客も自然に集まってくる▼警察官にとってはドーナツにありつけ、店側には「警備費」を上回る集客効果、客は安全を守られる。三者三様にメリットを得られるアイデアを研究するのが仕掛け学の極意と松村准教授▼仕掛け学とは聞き慣れない。やるべきことを自然にしたくなるように人々を仕向ける「道なき道」を探究する学問だそうだ。例えばオランダのある空港では男性トイレにハエが描かれている。そこを目がけて用を足すことで尿の飛散を防ぎ、清掃費を減らすことができたという▼街をきれいにするためバスケットボールのゴールが付いたごみ箱を設置すれば、思わずごみを投げ入れたくなる。人々の遊び心をくすぐりながら公益に導く仕掛けを説く▼松村氏は元々AI(人工知能)の研究者だったが、人間くさい仕掛け学に自治体や企業から共同研究の誘いが相次いでいるという。既存の学問からはみ出ながらも、社会に役立つ「隙間学問」の仕掛けにAIはかなわない。(前)

2017年1月29日 無断転載禁止