財政再建/「成長頼み」で大丈夫か

 内閣府はこのほど、安倍政権が掲げる「2020年度に基礎的財政収支を黒字にする」との財政健全化の目標が達成できず、むしろこれまでの見通しより赤字が悪化するとの試算をまとめた。

 安倍政権は「高い成長を実現することで税収を増やし、財政を立て直す」とのシナリオを描いてきたが、そのシナリ通りには進んでいない。

 借金が1千兆円を突破し、主要国最悪の日本の財政状況を、このまま放置するわけにはいかないだろう。

 そうだとすれば、国民に「痛み」の伴う歳出・歳入両面の抜本的な改革は避けられない。これまでの「成長頼み」の路線のままでいいのかどうか再検討すべきだ。

 基礎的財政収支は、社会保障や公共事業など政策に使う経費が、借金に頼らず、税収など基本的な収入でどの程度賄えているかを表す指標。その黒字化が財政再建の「最初の一歩」といえる。

 このため安倍政権は20年度の黒字化目標を公約。その中間段階として、18年度に国内総生産(GDP)比の赤字を1%に抑えるとしてきた。しかし、内閣府の試算は、これらの目標にほど遠い結果となった。

 昨年7月の前回試算で20年度は5兆5千億円程度の赤字と見込んでいたが、これが8兆3千億円程度へ大幅拡大。18年度の中間目標は前回のGDP比1・9%の赤字が、2・4%へこちらも悪化した。

 今回の主な悪化原因は税収の頭打ちだ。昨年秋まで続いた円高により企業収益が落ち込み、16年度の税収は政府の当初予想に届かない見通し。この影響が17年度以降も響く上に、消費低迷で消費税収なども増えにくいと見込んだという。

 この試算結果は、予想以上に厳しいと言わざるを得ない。なぜなら19年10月からの消費税率10%への再増税を織り込んだだけでなく、「実質で2%、名目で3%以上」というかなり高い成長が続く前提での数字だからだ。

 日本は過去20年間、1度も名目3%成長に届いたことがない。そのような条件下でも財政が悪化していく現実を直視すべきだろう。

 内閣府はもう一つ、実際の成長率に近い条件でも試算している。そちらでは20年度に11兆3千億円程度の赤字となり、その後も毎年度悪化していくとの結果になった。

 そうした厳しい見通しを踏まえたのか、このたびの施政方針演説からは、過去にあった「財政健全化目標を堅持」という文言が消えている。そして、政権の財政規律を大きく低下させた最大の要因は、「借金の痛み」をなくした日銀の超金融緩和にあると言ってもいい。

 事態改善はいばらの道であり、まず高齢化で膨張し続ける社会保障費の抑制が鍵となる。年金、医療そして介護それぞれの分野で給付とサービスの見直しが避けられず、高齢者であっても能力のある人には負担を求めざるを得ないだろう。

 そして消費税を筆頭に、社会保障制度を維持するための税負担の在り方を見直し、あらためて国民に提示する道も考えるべきだ。

 膨らむ社会保障費の陰となり見えにくいが、ほかの支出も安易な増大を許さず、重点配分をさらに徹底すべきだ。

 

2017年1月31日 無断転載禁止