100万円の子牛

 家畜市場での子牛の競り風景は、牛の鳴き声が時折響く以外、至って静かだ。牛を買おうとする参加者は、価格がどんどん上がっていく電光掲示板を見ながら、手元のボタンを押し続ける。最後まで押していた人が手を離した瞬間に掲示板が止まり、落札価格が決まる仕組みだ▼最近の鳥取県中央家畜市場(琴浦町)は100万円を超える落札が続出し、全国屈指の高価格市場になった。今年の初競りはついに平均価格が100万円を超えた▼理由は全国的な生産者減少に伴う子牛不足と、鳥取県産への高評価。鳥取県基幹種雄牛の2頭は、子牛の霜降りの度合いが全国トップクラスだ。そのため全国から購入希望者が殺到し、価格高騰に拍車が掛かる。市場の過去最高価格435万円の雌牛は沖縄県の試験場が改良事業のため落札した▼繁殖農家にとってはうれしい結果だが、肥育農家にはコスト高を招く一方。頑張って購入しても、売る段になって損にならない値が付くかは分からない▼県内の和牛生産規模は全国に比べて大きくはない。農家は2016年現在323戸で全国26番目。島根県と比べて3分の1だ。飼育頭数は28番目の1万300頭で、全国トップの鹿児島の30万頭などとは桁が違う▼優秀な種牛をつくったのは、子牛を県外へ出すためではない。鳥取和牛のブランド評価を揺るぎないものにして、肥育を含めた地元の和牛農家を潤すためだ。農家の平均年齢は65歳。肥育の対策を急がないと、あっという間に経営の足腰は弱まる。(示)

2017年1月31日 無断転載禁止