相続と養子縁組/事前に家族で話し合いを

 相続税を減らすための養子縁組は有効かどうかが争われた訴訟の上告審判決で最高裁は「節税目的の縁組でも、直ちに無効とは言えない」との初判断を示した。少しでも税金を減らし、より多くの財産を子らに残したいと親は思う。孫や子の配偶者らを養子にすることは広く行われており、そのような節税策の定着を追認した形になった。

 相続人が多いほど基礎控除の額が増える仕組みになっている。ただ民法は「当事者間に縁組をする意思がない縁組は無効」とし、相続税法も「相続税の負担を不当に減らす結果になる場合」は養子を相続人に数えないと定めている。今回の訴訟で二審東京高裁判決は、縁組は節税策にすぎないから無効としていた。

 この点、最高裁は「節税の動機と養子縁組の意思とは併存し得る」とした上で「縁組をする意思がないことをうかがわせる事情はない」と結論付けた。2015年の相続税増税で基礎控除が4割縮小され、サラリーマンでも地価の高い都市部に一戸建てを持っている人なら、相続税に無関心ではいられなくなった。

 生前贈与によって財産を減らしておく方法も含め”節税ブーム”が広がっている。一方、相続で不公平感が生まれ、トラブルになる例も後を絶たない。そうならないためには、あらかじめ家族でよく話し合っておく必要がある。

 訴訟で有効性が争われたのは、妻に先立たれた福島県の男性が亡くなる前年の12年に長男の幼い息子である孫と結んだ養子縁組。これにより法定相続人は長男と孫、娘2人の計4人となった。当時は、5千万円に相続人1人当たり1千万円を加えた額を基礎控除分として差し引いて相続税の額が計算された。現在はそれぞれ3千万円と600万円になっている。

 縁組で非課税の枠は広がったが、長男側の取り分が増えたことで娘側が提訴。男性が税理士から節税を勧められていたとし「縁組の意思はなく無効」と主張していた。最高裁がそれを退けたことで、節税目的の縁組はさらに増えるとの見方もある。

 ただ、どんな縁組でも認められるわけではない。縁組は課税逃れにも利用されてきた。過去に養子10人という例もあったとされ、1988年の税制改革で相続人にできる養子は実子がいれば1人、いなければ2人までと制限された経緯がある。今後も国税庁は縁組の経緯や生活実態を踏まえ「縁組が有効でも、控除を認めないことはあり得る」としている。

 相続を巡るトラブルは縁組ばかりではない。故人が残した預貯金を相続人でどう分けるかが家事審判で争われたことがあった。預貯金は約4千万円、相続人は2人。うち1人は生前に約5500万円を受け取っていたことから、もう1人が全額を相続できると主張した。最高裁決定は預貯金について「法定割合分をそのまま相続し、遺産分割の対象とならない」との判例を変更。「遺産分割できる」と判断した。

 より公平な相続の実に向け相続法制全体の見直しを検討している法相の諮問機関、法制審議会の議論にも影響を与えそうだ。ただ、争いの種や不満が尽きるとは思えない。家族の中で争いの芽を摘むための知恵を絞りたい。

2017年2月2日 無断転載禁止