(32)美郷町別府地区(下) 交流人口の拡大

ウオーキングマップやガイドブックを手に、作製の過程を振り返る(左から)原修さん、松本慎二さん、山崎弘子さん
 散策地図で都市住民誘う

 世界遺産の石見銀山遺跡(大田市)から江戸時代、瀬戸内海側まで銀を運んだ銀山街道が通り、三瓶山(同)や石見銀山ゆかりの仙の山(同)の眺望が楽しめるなど歴史と自然に恵まれた美郷町別府地区。魅力を発信する3種類のウオーキングコースを設定し、紹介するマップを地元住民グループが作製した。

 「銀の道やなしおコース」「暮らしの道別府コース」「花の道小松地コース」のそれぞれに見どころがいっぱい。地域の昔話やゆかりの人物、特産品を載せたA3判両面カラーのマップは、親しみやすいイラスト仕立てで、写真も盛り込み、里山散策の楽しさが伝わってくる。

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 地域を小まめに歩き、古老に取材するなど編集に力を注いだのは、別府連合自治会やNPO法人「別府安心ネット」の関係者らでつくる実行委員会。郷土史に詳しく、連合自治会長を長年務めた松本慎二さん(75)が委員長を務め、集落支援員の原修さん(70)らが加わった。

 作製の狙いは、交流人口の拡大。別府地区は、町による若者定住住宅の建設などで、国勢調査による過去10年の人口減少率が町内の他地区と比べて最も低いが、2005年から10年にかけては1人増だったのが、10年から15年までは32人の減少に転じた。

 危機感を抱いた松本さんらは、都市と地方の住民が交流する「共育ツーリズム」で地区の魅力を広く知ってもらおうと考え、ツールとしてウオーキングコースの設定とマップの作製を発案した。「別府には、都会の人の郷愁を誘う里山の原風景が残っている。まずは訪れてもらい、地域の活性化やU・Iターンの促進につながってほしい」と力を込める。

 別の効果も望めそうだ。作製に関わり、試行のウオーキングイベントに参加した山崎弘子さん(74)は「歩いてみて、地元の良さを改めて実感することができた。住民が地域に誇りを持つきっかけになる」と話す。地域の資源を掘り起こす成果の広がりに期待がかかる。

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 積極的な「共育ツーリズム」の受け入れにつなげようと、松本さんや原さんたちは、住民ガイドの養成に向けたガイドブックも作製。今後、連合自治会や同NPOなどが連携し、マップと併せた活用策を検討していく。

 折よく、地区内を通る銀山街道の日本遺産認定に向け、美郷町など島根、広島両県の関係市町が近く文化庁に申請する。特色のある歴史や文化、自然を生かした取り組みの展開に注目が集まる。

2017年2月2日 無断転載禁止