英国のEU完全離脱/悪影響の回避に努めよ

 英国のメイ首相が先日、欧州連合(EU)から完全に離脱する意向を表明した。その後、英最高裁が事前に議会の承認が必要との判決を出したため正式通知は遅れる可能性もあるが、離脱は避けられない見通しだ。

 欧州単一市場からの撤退は、英国はもとより世界にも大きな経済的影響を与え、自国第一主義や保護主義の風潮を強めることになる。悪影響を回避するために、英国とEUは冷静な姿勢で前向きの交渉をするよう望みたい。

 メイ首相はEU域内から流入する移民の制限を優先することを明確にした。この結果、人、モノ、資本、サービスの自由な移動を保障するEUの原則を満たせなくなり、域内の関税を撤廃する単一市場から去る道を選択することになった。

 EUとは新たに自由貿易協定(FTA)を結ぶ方針。3月末までにEUに離脱を通知し、2年の交渉期間でFTA交渉もまとめたい考えだ。

 英国の離脱派は、EUとの交渉で単一市場への残留と移民制限の両方を勝ち取りたかった。しかし、EU側は「いいとこ取り」は許さないとの姿勢を崩さず、メイ首相は移民制限のみを取らざるを得なかった。離脱派の思惑は虫がよすぎたと言うべきだ。

 単一市場から離脱することの経済的影響は極めて大きいとみられる。英国の輸出入の約半分をEU域内が占める。英国からEUへの輸出に高い関税率が課されれば、輸出が大きな打撃を受けることは避けられない。

 離脱の成否を占う上で鍵を握るのは、FTA交渉の行方だが、交渉は難航が予想される。一般に貿易交渉は当事者の利害が鋭く対立するため5~10年かかることが珍しくなく、2年で合意にこぎ着けるのは無理という見方が多い。仮に英国とEUが貿易協定を結ばない場合は、世界貿易機関(WTO)のルールの下で、輸出入に関税が課されることになる。

 英国は米国、中国、日本など第三国とのFTA締結も目指すが、この見通しも厳しい。EUを正式に離脱するまで、第三国との貿易交渉はできないからだ。こうした先行きの不確実性を嫌って、英国に進出している企業の一部は欧州大陸などに拠点を移すことが予想される。

 貿易以外の分野では、金融機関がEU全域で自由に営業できる「単一パスポート」制度が使えなくなるとみられる。金融業は英国経済の柱の一つであり、雇用も含めた影響は甚大だ。英国経済の悪化は当然、世界経済の下押し要因になる。

 今年はフランス、オランダ、ドイツで大統領選や総選挙が実施され、反EUを掲げる政党が躍進する可能性がある。EUは英国に続く離脱ドミノを防ぐために、英国との離脱交渉では安易な妥協をしないだろう。

 半面、離脱交渉はEU側にとってもリスクをはらんでいる。仮にEUが英国に高い関税率を課すと、英国からの輸入価格が上昇して輸入が減り、消費を中心に域内経済に負の影響を与える恐れがある。厳し過ぎると、自らに跳ね返ってくるかもしれない。

 離脱交渉は英国とEUだけの問題ではない。双方が共存共栄できる建設的な関係の構築を目指してほしい。

2017年2月4日 無断転載禁止