検索削除で初判断/幅広い議論が必要だ

 インターネット上にある過去の犯罪歴など検索結果の削除を巡り、最高裁は「プライバシーに関する事実を公表されない利益が検索サイトの表現の自由より明らかに優越する場合は削除が認められる」との初判断を示した。さらに削除の基準として、事実が伝わる範囲と具体的な被害、当事者の社会的地位や影響力など6点を挙げている。

 併せて検索結果の提供について「一定の方針に沿って行われ、事業者自身の表現行為の側面を有する」とし「現代社会で情報流通の基盤として大きな役割を果たしている」と位置付けた。プライバシー権が表現の自由に優越するときは賠償が認められるという出版物を巡る判例はあるが、それも「明らかな優越」までは求めていなかった。

 ネット社会における表現の自由と知る権利に重きを置いて、削除により高いハードルを設けたといえる。ただ時間がたてば削除を主張できるという「忘れられる権利」が注目されており「今回の判断で犯罪歴が削除しにくくなり、更生を妨げないか」という懸念の声もある。最高裁はこの権利に言及していない。

 とはいえ、現時点では判断の枠組みが示されたにすぎない。削除すべきかどうかの具体的な線引きは個別の事案ごとに裁判所が検討していく。今や日常生活から切り離せないネットとどう向き合うか。忘れられる権利も含め、幅広い議論が必要だろう。

 初判断が示されたのは、2011年に児童買春・ポルノ禁止法違反で逮捕され罰金刑を受けた男性が検索サイトのグーグルに逮捕歴など検索結果の削除を求めた裁判の決定。さいたま地裁は15年に「過去の犯罪を社会から『忘れられる権利』がある」と削除を命じたが、東京高裁は昨年「法律で定められた権利ではない」と認めなかった。

 今回、最高裁は削除の基準に照らし「児童買春は社会的に強い非難の対象とされ、今なお公共の利害に関する事柄だ」とした上で「一定期間、罪を犯さずに働いていることなどを考慮しても、公表されない利益が優越することが明らかとはいえない」と結論付けた。

 これ以外にも各地で犯罪歴削除の申し立てが相次いでおり、当事者などから統一基準を求める声が上がっていた。最高裁の決定に対する反応はさまざまだ。「当事者にとって、ネットで前科がさらされ続けるのはつらい。社会復帰の利益を重くみるべきだ」との意見もあれば、一方で「判断の枠組みが示され、今後は基準が具体化されていく」という指摘もある。

 確かに犯罪歴は慎重な扱いを要する個人情報で、軽微なものまで誰でも検索できるネット上にいつまでも残り続けるのは好ましくない。だが欧州で認められている忘れられる権利ですべてが解決するわけでもない。個人情報がむやみに削除されることにつながるとの懸念は根強くある。

 どんな犯罪なら、また事件からどれくらい時間がたてば削除が認められるかなどの基準は今後の裁判例の積み重ねを通じ、次第にはっきりしてくるだろう。検索事業者はそれぞれ対応を取っているが、利用者であり当事者になるかもしれない国民もプライバシーの保護と表現の自由について考える機会にしたい。

2017年2月5日 無断転載禁止