待機児童解消は大事だが…

 鳥取県が新年度事業で、保育所を利用せずに家庭で育児をする世帯に対する経済支援策を打ち出した。月額上限3万円の現金給付などの内容に意見はいろいろあろうが、在宅に目を向けたところに価値がある▼子どもがまだ小さかったころ、保育所に自由に入所できたらいいのにと思ったことがある。わが家は出産を機に妻が仕事を辞めて家にいたため「保育に欠ける」要件を満たしていなかった▼子育ての喜びは大きいが、少子化の昨今、在宅育児は共働き家庭と同様に大変なことも多い。核家族で夫の帰りが遅いと、母親が一日中、子どもと向き合うことになる。近所に同じような子育て家庭が見当たらない地域もある▼そんな状況を当時は「密室育児」や「孤育て」と呼んだ。最近は「ワンオペ育児」と言うらしい。飲食店で従業員を1人働かせるワンオペレーションに由来する。虐待も心配される危うい状況だ▼家庭にわが子と一緒にいるのに、思うような子育てができずに悩む親。スマホに子守を任せてしまう親もいる。一方の保育所では、さまざまな触れ合いや体験、配慮の行き届いた食事が提供される。保育に欠けやすくなるのはどちらだろう▼「1億総活躍」を叫ぶ安倍晋三首相は保育所の待機児童ゼロに熱心だが、施設の新設や増築で定員を増やせば、希望者も増える「いたちごっこ」のよう。在宅育児から逃れるために保育所を利用しようと、仕事を求める親もいるはずだ。子育て支援を待機児童解消だけで終わらせてはいけない。(輔)

2017年2月4日 無断転載禁止