東京一極集中/総力戦で食い止めたい

 住民基本台帳に基づく2016年の人口移動の報告が発表された。東京圏(東京、神奈川、埼玉、千葉)に転入した人の数は、転出者の数を11万7868人も上回る大幅な「転入超過」となった。21年連続で東京一極集中が続いていることを意味する。

 転入超過は7都府県あり、東京圏以外では愛知、大阪、福岡の3府県。16年の東京圏の超過人数は、前年よりも1489人少なく、5年ぶりに減少に転じたが、これをもって「地方創生の成果」といえるほどの数値ではない。

 安倍政権は「まち・ひと・しごと総合戦略」を14年末に決定し、東京圏の転入者と転出者の数を東京五輪が開かれる「20年には均衡させる」とした目標を掲げた。地方で毎年10万人分の雇用を生み出して流出を防ぐとともに、東京からの移住・定着に結び付ける新しい「ひと」の流れづくりに取り組むとする。

 実績を点検してみると、東京23区からの本社機能の移転では、移転促進の優遇税制の適用を受けた企業は16年末でわずか12社しかない。もともと地方にあって本社機能を拡充することで減税された会社は117社ある。これらの措置で生まれた雇用はまだ限定的だろう。国は効果を検証すべきだ。

 国が範を示すとしていた中央省庁の地方移転でも、全面的な移転は文化庁(京都府へ移転)にとどまった。ほかに、消費者庁が徳島県に、総務省が和歌山県にそれぞれ一部の新拠点を置くなどの方針は決めているが、他の省庁や独立行政法人も含めた国関係機関の移転による雇用の効果などは十分に明示されていない。

 安倍晋三首相はこれまでも「人口1億人の維持に真正面から取り組む初の内閣」「東京一極集中の是正を目指す」などと述べ、その姿勢をアピールしてきた。だが、鳴り物入りで始めたこれら施策の効果は、不十分ではないか。

 戦略を策定して2年が過ぎている。結果で示すか、少なくとも「20年均衡」に向け、裏付けがある具体的な道筋を早急に示すべきである。

 政府は今後、全国知事会の訴えを取り入れ、東京23区での大学や学部の新増設の抑制なども検討するとしている。これらも私立大学などの反発があり、効果的な施策につなげるのは困難ではないか。

 今国会の施政方針演説で安倍首相は「史上初めて、47全ての都道府県で有効求人倍率が1倍を超えました。全国津々浦々で、確実に『経済の好循環』が生まれています」と胸を張った。

 確かにデータは、ハローワークで仕事を探す人1人につき、求人が一つ以上ある状況を示しているが、この求人倍率は、景気回復のみで改善したとは言えない。地方では人口の減少や若者の流出が要因となって、慢性的な人手不足が生じている。

 今の総合戦略の内容だけでは、五輪に向け投資が集まる東京の独り勝ちが続くとみられる。中央省庁の地方移転を引き続き進めるとともに、若者の流出を止めるには、魅力がある大学や仕事を地方で増やさなければならない。それには国主導の政策だけでなく地方自治体が本気となり、総力戦で食い止める仕組みを考えなければ、大きな流れは変えられない。

2017年2月6日 無断転載禁止