迷走する日韓合意/韓国政府の努力が前提だ

 韓国・釜山の日本総領事館前に従軍慰安婦を象徴する少女像が設置されたことに対し、日本が長嶺安政・駐韓日本大使と森本康敬・釜山総領事を一時帰国させてから1カ月が経過した。

 しかし、韓国では事態をさらに複雑にする動きが続き、長嶺大使らの帰任時期を見通せない異常な状況となっている。2015年末にまとめた慰安婦問題の最終的な解決をうたった日韓合意の精神を復元させる努力を確認し合うところから、収拾の道筋を探るべきだ。

 そのためには、韓国政府に格段の決意と努力が前提となる。まず、少女像設置を恒久化しようとする釜山の現地行政当局や市民団体への説得を早急に図るべきだ。合意に基づき韓国政府が設立した「和解・癒やし財団」も、その存在意義が問われている。合意履行の姿勢を示すためにも、沈静化に向け積極的に動くべきだ。

 友人の政治介入スキャンダルにより弾劾訴追された朴槿恵大統領の業績を否定しようとする世論の流れを背景に、その業績の一つと位置づけられる日本との合意を一方的に覆し、少女像の設置が正当化されるようなことがあってはならない。

 大統領権限が空白となった韓国の政局は、今年上半期にも繰り上げ実施されるとみられる次期大統領選が事実上スタートした。出馬が予想される候補者は革新系が中心で、大半が日韓合意の再交渉や白紙化を主張している。朴大統領の退陣を求める世論を追い風に利用しようとしているため、日本に柔軟な姿勢を示しづらくなっているのだ。

 さらにこの1カ月、韓国では島根県の竹島(韓国名・独島)に慶尚北道の知事が上陸したり、長崎県対馬市の寺から韓国人窃盗団が盗んだ仏像の所有権は韓国の寺にあるとする判断を裁判所が出したりするなど、日本が到底受け入れられない事態が続いた。

 しかし、韓国の政治家が国際感覚を問われていることを忘れてはならない。情緒的になりがちな世論に迎合するような姿勢が、果たして先進民主国家を自負する国の指導者にふさわしいのかどうかを考えてもらいたい。

 国政運営機能が著しく低下した韓国だが、外国との合意事項を白紙化するような振る舞いが許されるものではない。このままでは国際的な信用を失うとの懸念は韓国内でも指摘されている。

 それはこの数年、成長率が2~3%台に低迷している韓国経済にも打撃を与えるだろう。トランプ米政権が貿易面で保護主義を打ち出し、多国間協定より2国間協定で国益を確保しようとする流れが台頭している。ここで問われるのは相手国の信用度だ。大衆迎合的な政治姿勢は、国内では支持を得るだろうが、対外的には警戒される。

 トランプ政権の登場により北東アジアの秩序再編は不可避となりつつある。日韓はそれぞれの国益を守るためにも、安全保障や経済など幅広い分野での連携をこれまで以上に求められている。

 今月半ばには、20カ国・地域(G20)の外相会合や安全保障会議がドイツで開かれる。日韓外相も参加する予定のこれら一連の国際会議を利用し、事態打開に向けたメッセージを示し合うべきだ。

2017年2月9日 無断転載禁止